クレディスイスが「従業員のPC、電話利用動向などから、仕事ぶりを監視するソリューション」を提供しているインドのスタートアップ、サピエンス・アナリクスに投資する。自社のFinTechファンド、ネクスト・インベスターズを通して行う予定だ。

従業員の労働パターンや素行を把握することで、「従業員エンゲージメント」「組織の生産性」「事業の利益性」の効率化を図るという意図だが、監視される側の従業員にとっては深刻なストレスになりかねないとの懸念もある。

日本の子会社も利用する、サピエンス・アナリクスの従業員分析ソフト

従業員エンゲージメント,生産性,効率化
(写真=Thinkstock/GettyImages)

2008年に設立された サピエンス・アナリクスのソリューションは、現在世界12カ国で70社、10万人以上から利用されている。

ソフトを導入するだけで、従業員がPCや電話を利用してどれほどの作業をこなしているか、チームとしてどれほどのタスクを達成したかなどを分析し、個人あるいはチームが今後重視すべき領域や優先事項を教えてくれる。

タスクや活動内容を配慮したタイムシートの自動化で操作実働時間の削減にも役立つなど、雇用側の業務効率化には最適なツールだ。

クレディスイスが投じる金額や、自社にサピエンス・アナリクスのソフトを導入するかについては一切明かされていない。

サピエンス・アナリクスはフォーチュン・グローバル200社や大手IT企業、日本の子会社などにも、ソフトを提供しているほか、IBMの人材管理サービス、スマーター・ワークフォースとも提携している。

欧州大手銀行は「熱センサー」で従業員の動きを測定

こうした「社内モニタリングツール」を、ワークロード(作業負担の割合)の最適化やプロセスの改善、作業の自動化、ガバナンスの外部委託など、様々な領域で効率化を図る手段として、導入する企業が増えている。

今夏、バークレイズ銀行やロイズ銀行、ドイツ銀行、スタンダード・チャータード銀行など、欧州大手金融機関がこぞって、従業員デスクに設置した「熱センサー」で作業時間を測定するという試みにでた。

英国の不動産コンサルタント、コリアーズ・インターナショナルの調査によると、ロンドンにおける従業員デスクの維持費は1人分につき年間1.3万ポンド(約186万円/フィナンシャル・タイムズ紙より )。雇用側が削減に必死になるのも不思議ではない。

しかし従業員にとっては四六時中監視されているという状態は、相当なプレッシャーになるはずだ。こうした監視ツールをTV番組「ビッグ・ブラザー(外部から隔離され、カメラやマイクが仕掛けられた家の中で、見ず知らずの人間が一定期間集団生活を送るドキュメンタリー)」に例える声も多い。

従業員や労働組合からの苦情が殺到し、導入した日に撤去せざるを得なかったデイリー・テレグラフ紙のような例もある。

センサータイプは机の所有者ではなく机の周囲の動きを察知するため、メーカーや企業は「匿名性」を強調している。従業員にストレスを与えることなく、大まかな作業時間の測定を試みているというわけだ。それゆえに「従業員ではなく、清掃員や犬の動きを監視している可能性もある」などと、効果自体に疑問も挙がっている。

効率性を重視すれば、サピエンス・アナリクスのソリューションの方が遥かに信頼性が高い。その反面、従業員が精神的に抱える負担も大きくなるはずだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

( FinTech online編集部

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