中国やインドではFinTechの普及率が50%を上回っているのに対し、日本やベルギー、ルクセンブルク、カナダでは20%にも満たないことなどが分かった。

調査はアーンスト・アンド・ヤング(EY)が、FinTechの普及率を測る目的で、世界20市場、2万人以上の回答者から収集した情報をまとめたものだ。対象となる「FinTech」とは、テクノロジーを活用した決済・送金、融資、資産運用・管理、保険商品・サービスを指す。

総体的な普及率は33% と2015年から17ポイント増えており、消費者間の認識度も22ポイント増の84%まで上がっている。

将来的にはシンガポールがUKや世界平均を上回る?

「FinTechの商品・サービスを2つ以上利用している」回答者は、全体の33%。「5つ以上利用している」というFinTechに慣れた回答者も13%いる。新興国での普及率は48%。

FinTechが最も普及しているのは中国(69%)、インド(52%)、UK(42%)、ブラジル(40%)、オーストラリア(37%)。遅れをとっているのはベルギーおよびルクセンブルク(13%)、日本(14%)、カナダ(18%)、シンガポール(23%)、アイルランド(26%)だ。

FinTechの促進にかなりの力を入れているシンガポールで、予想以上に普及率が低い点が意外である。同国は南アフリカとメキシコと並び、インターネットの利用率が非常に高いことでも知られている。しかし将来的には56%と、UK(53%)や世界平均(52%)を超えるとの予想だ。

年齢層は25~34歳(48%)、35~44歳(41%)と、デジタル慣れしたミレニアル世代が圧倒的に多く、18~24歳(37%)が予備軍として控えている。利用率は高齢層になるほど低くなり、75歳以上の利用率はわずか9%だ。

意外に利用率の低いFinTech融資、回答者の7割が個人情報を懸念

人気が高い商品・サービスは決済・送金で全体の50%を占めている。保険(24%)、貯蓄・投資(20%)が続く。P2Pに代表される融資は10%と予想に反して低く、ファイナンシャル・プラニングと同じ水準である。

FinTech利用者・非利用者問わず、各70%前後が「ネットによる個人情報の流出」を懸念している。

興味深いのは、「取引条件をしっかりと把握してからサービスを利用する」「便利なサービスであれば、料金が多少高くでも構わない」という回答が、FinTech利用者の方が多かったという事実だ。

FinTechの魅力の一つとして「利便性と低コスト」が一括りにされてきたが、利用者はコストよりも利便性を重視していることになる。また取引条件に十分な注意を払っている利用者が多い点も、高く評価すべきだろう。

FinTechに消極的な回答者は、スマホを含むデジタルチャンネルを通して金融サービスを利用することに抵抗が強く、利便性にも関心が薄いようだ。

また金融関連以外のネット利用動向にも差が開いており、ネット・ストリーミング、チャット、SNSの利用率は総体的にFinTech利用者が高い。

特に配車サービスのUberや民泊のAirbnbなど共有経済の利用率は、FinTech利用者が44%であるのに対し、非FinTech利用者は11%と4分の1に落ち込む。オンデマンドも同様の結果だ。

当たり前のことではあるが、FinTechの成長・普及は技術の発展や企業の取り組み。投資だけではなく、消費者の受け入れ体制や市場の需要が大きく影響する。

金融庁や大手企業の取り組みに加え、優秀なFinTech企業が続々と登場しているにも関わらず、日本でのFinTech普及率が頭打ちしている理由は、従来の金融機関によるサービス・商品に満足している消費者が多いということなのだろうか。

そう仮定した場合、日本のFinTechには、他国とは全く異なるアプローチが必要となるのだろう。 (アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

( FinTech online編集部

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