古今東西、意思決定の失敗により盤石だった大企業が衰退したり社会に多大な損害を発生させたりする事例に事欠かない。人気の経済評論家であり自ら会社経営も行う著者が組織マネジメントの失敗の本質について明らかにしている。

『日本経済を滅ぼす「高学歴社員」という病』
著者:上念司
出版社:PHP研究所
発売日:2017年6月1日

組織に危機をもたらす「高学歴社員」

日本経済を滅ぼす「高学歴社員」という病
(画像=Webサイトより)

数ある組織マネジメントの失敗を考察した結果、それを引き起こす人物の特徴を著者は「高学歴社員」と名付けている。もちろん高学歴な人全てを批判している訳ではない。「高学歴社員」の定義について、5つの特徴を提示している。詳細は本書に譲るが、分かりやすく言えば、責任を取らず自己保身に走る人だと言える。

「高学歴社員」の失敗で愕然とさせられるのが、太平洋戦争のインパール作戦だ。戦死者3万人に達した無謀な作戦を推し進めたエリート達にとって大事だったものは、作戦の成功確率でも兵隊の命でもなくメンツや保身であったことがよく分かる。

そのほか特に印象に残った「高学歴社員」的な組織の例がかつての日本銀行だ。その日銀を長年に渡って批判し運営を改めるよう強く求めていたのが、著者を含むリフレ派と呼ばれるメンバーだった。

日銀を変えたトップダウンの改革