しなやか快調ボティを手に入れよう!
いまテレビや雑誌で話題の筋膜(きんまく)リリース。
聞いたことはあるけれど、ストレッチとどこが違うの? という人も多いはず。
「そもそもストレッチは筋肉の柔軟性の向上やけがの予防のため、対象となる筋肉を伸ばすことを目的とするもの、それに対し筋膜リリースは体の歪みや姿勢の改善するため、筋肉を包んでいるネット状の線維の収縮や癒着をとることを目的とするところが大きく違います」とはメディカル・スポーツトレーナーの、のぐち径大さん。
のぐちさんは現役メジャーリーガーやオリンピック選手など、これまで多くのスポーツ選手のトレーナーとして、体のケアや効果的な動きの指導をしてきた。
今回はそんなのぐちさんに、しなやかで快調なボティを手に入れるための、いつでも、どこでもすぐできる「ながら筋膜リリース」メソッドを教えてもらった。
そもそも筋膜って何?
筋膜とは、筋肉や骨、血管などを包んでいる組織のこと。この筋膜が筋肉と癒着してしまうと、機能性が落ちるとともに、あらゆる不調を引き起こす原因にもなります。
また、体はいくつかの筋膜のまとまりやつながりで構成されているので、一部や一点でも筋膜の機能が制限されると、そこから離れた部分の動きが低下することもあります。
筋膜リリースは、そういった機能不全を改善したり、予防したりすることで、体全体を機能的に動きやすくすることを目的としたメソッドなのです。
とはいえ、実際にそんなに難しい動きを必要とするわけでもなく、何かをしながら、体の動きをちょっと意識するだけで、カンタンにできるところが「ながら筋膜リリース」のいいところ。
それでは早速、そのいくつかを紹介していきましょう。
電車移動時はつり革でお腹まわりをダイエット
通勤や営業での電車の移動時間、あなたは何をしていますか?
多くの人が、LINEをしたり、フェイスブックをチェックしたりなどスマホを見ながら手持無沙汰な時間を紛らわしているのではないでしょうか。
ただ、このスマホを見るという行為自体が、目の疲れや肩のコリ、体の緊張を助長する行為なのです。
それならばいっそのことスマホを見るのをやめて、筋膜リリースで気になるお腹周りを引き締めてみてはいかがでしょう。
やり方は超カンタン。
まず、電車の進行方向と逆の手でつり革を持ちます。そのとき下のイラストのように足を交差させるのがポイント。あとは体を進行方向にちょっと傾けるだけ。
特に電車の発進時などは体が電車の進行方向とは反対の方向に引っ張られるため、肩甲骨周りからわき腹にかけての筋膜リリースが効率的に行えます。この時、つり革を持った手を内側にひねったり、外側にひねったりすると負荷のかかる場所が変わり、よりリリース効果が高まります。
結果、腹斜筋の動きがよくなり、お腹周りの引き締め効果が望めるのです。
片方やったら、反対側もやりましょう。ただ、混雑時は人の迷惑になるので控えておくことをおすすめします。
エスカレーターは脚の疲れを癒す絶好の場
駅やビルなどにあるエスカレーター。
あなたは「歩いて上る派」? それとも「立ったまま、ゆっくり上る派」?
ちなみに私は「立ったまま、ゆっくり上る派」です。なぜなら、エスカレーターは太もも裏側のハムストリングやふくらはぎの筋膜をリリースするのに効果的な場所だからです。
では、その方法を説明しましょう。
まず、エスカレーターに乗ったら片足を上のステップにかけてください。
下のステップの足はかかとを後ろにずらし、ステップから少し落とします。
そうしたら、今度は坐骨を後ろに引くようなイメージで前傾していきましょう。
このとき背中が丸くならないように注意してください。
かかとを落としたほうの脚の裏側に伸びを感じたらリリース終了です。
反対側の足も同様に行いましょう。
特に、営業職で外周りをしている人や立ち仕事の人は脚や腰にかなりの疲労がたまりますので、このエスカレーターでの筋膜リリースはおすすめです。ぜひ試してみてください。
膝裏や腰の痛みの緩和や予防にも効果がありますよ。
回転いすで体幹を鍛える!
ここまで紹介してきた筋膜リリースは、実は二つの引っ張る力を利用して、効率的にリリースを行っています。
わかりやすい例でいうと、エスカレーターを使った筋膜リリースでは、かかとを落とすことで下に引っ張られる力と、前屈をすることで、腰から下の筋膜が上に引っ張られることでリリースを行っています。
そういう意味では、オフィスにある回転いすは筋膜リリースに最適なアイテムと言えます。いすの回転を利用して体がねじりやすくなるので、反対方向の力が得やすいのです。
では、この回転いすを使った、仕事の合間に行える簡単筋膜リリースを紹介しましょう。
まず回転いすに座り両手を組んで上にあげます。
ちょこちょこと小刻みに足をずらしていき、それと同時に足をずらした方向とは反対方向に、体を傾けるようにして腕を下していってください。
ポイントは足をちょこちょことスライドさせること。小刻みに移動させることで、じわじわとわき腹が伸び、リリース効果が高まります。もちろん反対側も同じように行いましょう。
このとき、リリースされるのは腹斜筋の筋膜ですが、体をねじることにより同時に体幹も鍛えられるのでおすすめです。
さらに、お腹の引き締め効果もありますし、腰回りの筋膜を緩めることで、デスクワークなどの座り仕事がラクに行えるようになります。
「いただきます」から「スマン」で肩こり解消?
最後に、デスクワークなどで肩こりがひどい人のために、どこでもできる肩こり解消の筋膜リリースを紹介します。
それはズバリ、「いただきます」のポーズ。
日本人ならほとんどの人が食事の前に「いただきます」をするはずです。もちろん言葉だけ、心の中でつぶやくだけという人も多いでしょう。ただ、肩こりを解消したいのなら、手を合わせるポーズもやるべきです。このポーズで肩甲骨の間や背中の筋膜がリリースできます。
やり方はいたって簡単。手を体の前で合わせたら、脇を軽く締め、腕をそのままの形で前に突き出すようなイメージで肩甲骨を開いていってください。
このときより効果を求めるなら、お辞儀をするように前に出した腕を頭上にあげてみましょう。
そう、「スマン」のポーズをとるのです。そうすることで背中にさらに負荷がかかり広背筋の筋膜がよりリリースされていきます。
肩こりのみならず背中の痛みなどの緩和、予防にも効果ありです。
「いただきます」から「スマン」の移行ワザ。ぜひ試してみてください!
効果的なリリースを行うポイント
筋膜リリースは回数や時間を気にすることなく、自分のペースで好きなときに行うようにしてください。
その際のポイントは伸びて「きもちいい」と感じること。きもちよさを感じる強さや時間は個人差がありますので、自分の感覚を信じて行うのが正解です。
もし、鋭い痛みが伴うようなら、やり方を調整する必要があります。また調整しても痛みが出るようなら、方法を間違えてその部分を痛めてしまった可能性があるので、専門家の意見を仰いでください。
また、1日1回でいいので、可能ならば鏡を見ながらリリースポーズのチェックを行ってください。人間は鏡を見ると本能的に姿勢を整えようとします。体の形や動きも客観的にみられるようになるので、筋膜リリースの効果も高まります。
いかがでしたでしょうか?
やりたいときにやれるだけやればいい。それが「ながら筋膜リリース」のいいところです。
そんなお手軽カンタンメソッドで、ぜひ、あなたも快調でしなやかなボディを手に入れてみてください。
【著者紹介】
のぐち径大(のぐち・けいた)
東中野はりきゅう整骨院 SPORTS LAB代表
スポーツトレーナー・鍼灸師・柔道整復師
埼玉・熊谷接骨院の遠藤慎二氏の元で修業。その間、整形外科のチームでオペの見学や外傷の整復治療からリハビリまでを一貫して経験する。さらに東京・青山外苑の医療機関にて鍼灸を学んだ後、産科・婦人科疾患の鍼灸治療でも結果を出す。しかし、これだけでは『人』は治らないと思い、持ち前の好奇心と人柄から色々な人と出会い自分の可能性を広げる。後に東中野はりきゅう整骨院 SPORTS LABを開業。メディカル的視点とスポーツトレーナー的視点を併せ持ち、現役メジャーリーガーやオリンピアンなどからの信頼も厚い。
著書に『ながら筋膜リリース』(あさ出版)がある。(『
The 21 online
』2017年08月13日公開)
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