季節は夏から秋に変わろうとしていますが、株式市場にも涼しい風が吹いているようです。6月から8月中旬にかけ、日経平均株価は2万円をはさんだボックス相場で推移していましたが、それ以降は下放れてしまいました。日米の政治不安に加え、北朝鮮を巡る緊張状態が強まったことなどが要因であると考えられます。

もっとも、日経平均株価が6/20(火)に年初来高値を付けてから2ヵ月半が過ぎ、悪材料の織り込みは進みつつあると考えられます。我が国の企業業績は拡大を続けているので、今後さらに株価が大きく下がる可能性は小さいと考えた場合、買い場は近づいているのかもしれません。

そうした中、今回の「日本株投資戦略」では、経営効率や収益力が高い銘柄をあぶりだすと考えられる「ROA」(総資産利益率)という投資指標に注目してみました。ROAが高く、今後も成長が期待される銘柄のうち、押し目が形成され、買い場が到来していると考えられる銘柄をご紹介したいと思います。

注目の投資指標「ROA」とは?「波乱相場に強い実力派銘柄」はコレ!?

今回の「日本株投資戦略」では、経営効率・収益力が高く今後も成長が期待される銘柄のうち、押し目が形成され、買い場が到来していると考えられる銘柄を抽出してみました。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)時価総額1,000億円以上の東証上場銘柄(金融・REIT・ETF等は除く)
(2)6/20(日経平均株価が年初来高値を示現)から9/6(水)までの株価下落率が5%超
(3)営業利益(前期)が黒字
(4)予想営業利益(市場コンセンサス)が今・来期ともに5%超の増益見通し
(5)予想PERが20倍未満

上記の全条件を満たす銘柄を、ROA(総資産利益率)の高い順にランキングしたものが「表1」となります。

東証上場銘柄を、ROAの高い順に並べた後、足元の業績が堅調で割高感の乏しい銘柄に絞ったのと同じ結果となります。そこで、ポイントはROAとなり、「ROAとは何か」と思われるかと思いますが、その説明は次項に譲りたいと思います。

(1)で時価総額1,000億円以上の「主力銘柄」に絞った理由は、市場で一定の信認を受けた銘柄から抽出しようと考えたためです。ある程度一般的で知名度の高い銘柄が中心となっていますので、初心者の方にも比較的投資しやすいと考えられます。

また(2)の条件については、6/20(火)~9/6(水)に日経平均株価は4.3%下落しましたので、それより下落率がやや大きい銘柄を抽出することを狙っています。今後、株価が反発局面に入った場合、それまでの下落過程で大きく下げた銘柄の方が大きく戻りやすいと考えられるためです。

(3)や(4)では、足元の業績が堅調である銘柄を選ぶこと、(5)の条件は割高感の強い銘柄を除くことを目的として入れた条件になっています。

注目の投資指標「ROA」とは

今、なぜ「ROA」なのか?

ROA(総資産利益率)は、「純利益」を「総資産」で割って求められます。「総資産」には前期と前々期の平均を使うのが妥当とみられますが、今回は簡易に前期の数字を使っています。「総資産」は現金や有価証券などの流動資産や、工場や営業所、それらが建てられている土地などの固定資産等から成り立っています。会社が持っている資産すべてを活用し、どのくらいの利益を稼ぎ出しているのかを示すのがROAと言えます。

今、100億円の総資産を有しているA社とB社という企業2社を想定した時、A社は20億円の純利益を、B社は10億円の純利益を獲得したとします。この時、A社のROAは20%、B社は10%と計算されます。そしてROAの高いA社の方が、資産効率が良いという評価をすることができます。

なぜ、同じ規模の資産を使っていながら、この2社に差が出るのか理解するためには分析が必要となります。資産の内容や、生産設備の質に差があるのかしれませんし、営業力が違うのかもしれません。A社に資産効率で後れを取っているB社は何をすべきか、それこそが経営課題ということになる訳です。

実はこのROAについて、日経平均採用銘柄全体では2.9%(2016年)であり、S&P500採用企業(米国)の2.89%(2016年)を上回ったという興味深い記事が掲載(9/2付・日本経済新聞)されています。

よく、日本企業の「資本効率」は海外企業に比べて劣るとされていますが、これは「純利益」を「純資産」で割って求められるROEについて、日本企業が海外企業より低いことを示しています。日本企業は現金を抱え込み過ぎており、資金が有望分野に投資されていないという批判をよく耳にします。しかし、ROEは純資産が小さければ高い数値になるので、自社株買いをたくさん行ったり、借入金を多く抱えた企業が上位になりやすいという特徴もあります。「ROEが高い企業は投資対象として有望」とは必ずしも言い切れない面があるのです。

こうしたROEに対し、ROAは会社が持つあらゆる資産を駆使しての収益力になりますので、会社の実力の一端を示していると言えそうです。株式市場で不安定な動きが続く中、収益力のある実力派企業に投資するというのもひとつの考え方ではないでしょうか。

表2は東証に上場する時価総額1千億円以上の銘柄(金融・REIT・ETF等は除く)について、ROAの高い順にランキングしたものです。株式市場はこれらの企業を高く評価している面があり、PERなどが高くなる企業が多いようです。表1の企業は、表2の企業に比べるとROAが低めですが、日経平均採用銘柄全体の数値よりも高く、株価やPERの面で出遅れ感が強くなっていると考えられます。

ROAランキング ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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