相続で土地や住居を引き継いだ不動産の所有名義を変更する相続登記。いざ不動産を相続することが決まって手続きをしようとしても、手続きが煩雑なため後回しにしてしまうケースもあるでしょう。なかでも、相続の手続きに必要な書類を揃えることは一苦労です。実際に、相続の手続きにはどのような書類が必要なのでしょうか。

相続登記の概要

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(写真=JP WALLET/Shutterstock.com)

相続登記は、不動産登記簿上の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きです。しかし、実は相続登記に対する法的な義務はありません。さらに言えば、相続税の申告のような「相続開始から○ヵ月以内」という期限もありません。

分かりやすい例を見てみましょう。一軒家を相続した相続人が、自分がそれまで住んでいた賃貸住居を出て、その一軒家に住むということはよくあります。この時、相続登記をしないと住めないなどの法的な決まりはありませんし、そのまま移住しても問題はありません。

しかし、相続登記をしていないと、その物件の名義人ではないことになります。たとえ相続人の間で合意があったとしても、その物件が自分のものであると公に主張できません。このことが、後からさまざまな弊害が起きるかもしれません。例えば、自分や親族間で新たな相続が発生した時に、その物件の所有権に関して遺族間で揉める可能性があります。法的に自分の所有物ではないため、揉めた時に権利が主張できなくなる可能性もあります。

他にも、その物件を売却しようとしても、相続登記が完了していないと売却ができません。結果的に売却するために過去の相続手続きを遡って行う必要もあるのです。このようなリスクを考えると、相続で不動産を受け継ぐ時にはできるだけ早めに相続登記をすることが望まれます。

相続登記の必要書類

では、相続登記申請の際には必要書類にはどのようなものがあるのでしょうか。

実は、相続といっても「遺言書による相続」や相続人全員で話し合う「遺産分割協議による相続」、民法に定められた「相続割合での相続」など、さまざまな形式があります。

相続登記の際には、その不動産が被相続人から相続人へ受け継がれる経緯の確認も必要なので、相続のタイプによって必要書類が変わります。ここでは「遺産分割協議による相続」の場合で必要書類を説明します。

・ 所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
・ 遺産分割協議書
・ 被相続人(故人)の出生から死亡までの経過の記載がわかる戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)
・ 除籍謄本(除籍全部事項証明書)
・ 遺産分割協議の当事者である相続人全員の戸籍全部(一部)事項証明書(戸籍謄抄本)
※被相続人の死亡日以降に取得したもの
・ 遺産分割協議を行った相続人全員の印鑑証明書
・ 申請にかかる不動産を相続することになった相続人全員の住民票写し(マイナンバーが記載されてないもの)

これらの書類に、登録免許税を添えて提出することになります。登録免許税を収入印紙で納付する場合は収入印紙を貼り付けた用紙、現金で納付する場合は領収証書を貼り付けた用紙を申請書と一括してつづります。つづり目に契印(割り印)をして管轄の法務局へ提出するというのが一般的な流れです。

また、被相続人の最後の氏名および住所が、登記記録上の氏名および住所と異なる場合や、被相続人の本籍が登記記録上の住所と異なる場合には注意が必要です。その場合、被相続人が登記記録上の登記名義人であることがわかる本籍が記載されている住民票の除票、または戸籍の附票の写しなどが必要になるケースもあります。

手続きは代理人に委任可能

相続人の数が少なく、近くにいる場合には、書類の収集にはあまり手間がかからないかもしれません。しかし、相続人の数が多く、遠方に相続人がいる場合などは、相続書類が簡単に揃わないこともあるでしょう。

また、被相続人が出生から死亡までの間に転居を繰り返していたり、離婚・再婚を繰り返していたりするなど、戸籍の記載項目が多い場合は集める書類も多くなりがちです。登記上の記録と情報が異なる場合は、想像以上に手間がかかる可能性があります。

このように、相当な労力を要する相続登記は自分で行うこともできます。しかし内容が複雑だ、時間がなくて自分ではできない場合などは、司法書士などの代理人に委任することが可能です。代理人に委任する場合は、上記必要書類に加え委任状を提出します。

複雑な手続きはプロに任せるのがおすすめ

登記申請は申請者自身で行うことも可能です。法務局では実際に登記申請にかかる事前相談や書類の記載方法にも応じてくれます。しかし、事前相談とは言いながら、ある程度の基礎知識がないと1回で相談を完了するのは難しいかもしれません。法定相続人であることが分かる書類準備を求められる、長時間の相談が難しいなど、何度も法務局へ通わなくてはならない可能性もあります。平日に役所へ出向くことも、ビジネスパーソンにとっては簡単ではないでしょう。