国税庁は9月6日、HPのタックスアンサーにて「ビットコイン使用による利益は雑所得に該当」という見解を発表した。これにより投資家からは「投資の旨みがまったくないじゃないか」「節税対策にすらならないなんて」という声が上がっている。雑所得に該当するとはどういうことなのだろうか。そして、株式投資の場合とどのように違うのだろうか。

人気沸騰の仮想通貨だが法律的にはグレーゾーン

ビットコイン
(写真=PIXTA)

ビットコインは2008年、サトシ・ナカモトという人物による論文発表により公開された。機密性の高さ、改ざん性の低さ、そしてシステムダウンへの強さから、バーチャル貨幣として信用を得て、流通している。かつてはピザ2枚で交換できるほど低い価値しか持たなかったビットコインも、今や1BTC 50万円をつけるなど、仮想通貨は世間の注目をかなり集めるようになった。

その一方、法整備は後手に回りがちだ。2014年のマウントゴックスの事件以降、ようやく資金決済法や消費税法で仮想通貨が「支払手段として非課税」の位置づけがなされたものの、肝心要の所得の扱いについてはいまだ法的な定義がなされていない。そのため、「譲渡所得に該当するのでは」と主張して、長期保有や損失の繰り越しによる節税効果を期待する声も上がっていた。

雑所得に該当すると低税率適用も損失の繰越もない

しかし、今回の「仮想通貨の損益=雑所得」という見解発表はこの期待に釘を刺すこととなった。なぜなら、雑所得には譲渡所得にある旨みが一切ないからだ。

具体的に言うと次のようになる。

・雑所得は総合課税
そのため利益が大きければ大きいほど、高い税率が適用されることとなる(最高税率:所得税45%+住民税10%=55%)
・雑所得の計算は「収入-必要経費」
ここでマイナスが生じてもゼロとしてカウントされるため、損益通算や損失の繰越はできない。

さらに、仮想通貨は値動きがあるものの、株式と異なり配当がない。つまり、旨みは利ザヤしかないのだ。その売買の損益が節税につながるならまだしも、それすらなく、儲けた分だけ税金で取られ、さらに損失が出てもカバーされないということになれば、人によっては「節税になる商品で儲けた方がいいよね」ということになるのである。

株式には損益通算も低税率適用もある

一方、投資対象として仮想通貨とよく比較される株式はどうだろうか。株式投資により発生した損益は譲渡所得に該当する。具体的には次のようになる。

・株式等(投資信託や公社債含む)の譲渡益は申告分離課税の対象となり、税率は所得税15%(平成49年までは復興特別所得税として2.1%をプラス)、住民税5%。
・上場株式等の譲渡で損失が発生した場合、上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算ができる(他の譲渡所得や譲渡所得以外の所得との損益通算は不可)。

また、損益通算しても控除しきれない場合には、翌年以後3年間にわたり、上場株式等の譲渡所得等の金額や上場株式等の配当所得等の金額から繰越控除することができる。

さらに、要件を満たせば、NISAやジュニアNISAにより5年間、最大600万円まで、株式の値上がり益や配当金は非課税とすることができる。税制上優遇されている上、配当金もある株式は、仮想通貨ほど急激な価格上昇とそれによるハイリターンは見込めないが、堅実に利益を得たい投資家には向いていると言えよう。

なぜ仮想通貨と株式で税法上の扱いが違うのか

投資家のため息を奥深く探れば「同じように譲渡所得にしたっていいはずなのに、どうして違うのだ?」という疑問に行き着く。株式と仮想通貨の取扱いの違いは、それぞれの性質とその背景にある。

株式は、投資の対象となるとはいえ、企業の資本を形成するものだ。この資本には、株主の企業の事業の支援という意図と企業の成長への期待が込められている。だからこそ、配当と形で株主に利益が還元される。それだけではない。その企業が成長すれば雇用や市場の活況、税収など、日本経済全体の成長と福祉に貢献することになる。だからこそ、国も税制をコントロールして企業のバックアップの務めるのだ。

一方、仮想通貨は、支払手段という側面を持つものの、それは国や自治体の管理下に置かれたものではない。なおかつ、市場が活況を迎えたとしても、一部企業や個人投資家が潤うだけだ。現時点で、直接日本経済の成長や福祉に貢献する見込みはない。投機になりかねない仮想通貨投資を税制的にバックアップすると、貧富の差の拡大や労働市場の衰退につながる可能性もあるという見方もできる。

今後予想される仮想通貨税制の行方

今回の見解発表はあくまで見解に過ぎない。つまり、税制改正と国会の承認を得た法律にまでは至っていない。そのため、反論の余地がないとは言い切れない。しかし、今回の見解発表から今後の仮想通貨に関する税制改正について予測ができるようになったことから、見解に反した強気な節税策はかなり難しくなったと考えていい。

私見であるが、仮想通貨取引はFXと類似する。「値動きが激しい」「支払手段である」「配当がない」という点で共通しているからだ。そう考えると、「雑所得に該当」という見解も納得がいく。

将来、税制改正により、FXと同様「その他の雑所得等」として、仮想通貨同士の損益通算は可能になるかもしれない。それでも、仮想通貨自体が株式のような社会貢献性を持たないことから、低税率の適用といった大きな節税効果につながる改正は期待できないであろう。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。現在、外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、数字に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、経済的DVにまつわる心理についても独自に研究している。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。ブログ「 税理士がつぶやくおカネのカラクリ

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