◉CEOの長期業績を分ける要因


①外部招聘よりは内部昇進のCEOの方が有利

CEOは内部昇進により抜擢された方が良いのか、それとも外部から招聘した方が良いのかは、長年のテーマといわれています。
そして今回の調査対象となった3143人のCEOのうち、74%が内部昇進者(創業者含む)とのことでした。また、全体としては内部昇進者の方が外部招聘者よりも好業績であったという結論が出ています。内部昇進者の順位の平均は、外部招聘者のそれを154位上回りました。

ただし、この傾向は世界共通ではなく、地域ごとに異なるようです。
米国、英国、中南米では内部昇進者の方が好業績であり、大陸ヨーロッパ諸国や中国、インドでは両者の業績の違いはほとんど見られませんでした。

なお、内部昇進者の場合は当然創業社長も含まれます。

参考: 「創業社長VSサラリーマン社長」~アジアの富裕層ビジネスから見えてきたもの~

②赤字企業を引き継ぐと有利?

これも国毎によって傾向が分かれるのですが、米国や中国、イギリスやインドでは、前任者が会社の業績を悪化させた後に引き継いだ場合、好業績を示すCEOが多かったようです。しかし大陸ヨーロッパ諸国や中南米、日本等ではそのような傾向は見られないそうです。

③わずかながら、MBA保持者のCEOが有利

CEOにMBAが必要かどうかも、長年のテーマです。
2008年の金融危機の後は、MBA保持者のCEOは一時企業価値の破壊者として非難されました。しかし、今回の調査によると、MBA保持者の平均順位は、非保持者のそれを僅かにですが40位程上回るようです。

MBAの保持者であれば、自動的に経営が有利になる仕組があったというわけでもないので、MBAの保持が一定以上はCEOとしての能力に影響があると言えそうです。

④ハイテク業界やエネルギー業界に優秀なCEOが多い傾向

上記の「ランキングの集計方法」でも述べましたが、今回のランキングで業種の違いによる業績の影響は極力排除して集計されています。しかし、ハイテク産業という切り口で見ると、5社のCEOがBEST10の中にランクインしています。
また、エネルギー業界のCEOの人数は今回の調査対象者の内5%に過ぎませんが、上位100名の内15%を占めています。

⑤会社の業績と、地域・環境への配慮に相関関係は無い

近年、「企業の社会的責任(=CSR)」という概念や用語はだいぶ一般的なものとなりました。そして経営者は、業績の成長・安定だけではなく、地域社会への貢献や環境への配慮が求められるとされています。

これは非常に素晴らしい理想ではあります。しかし、今回の調査の結果は、企業の業績と社会面・環境面への配慮の間に相関関係は無いというものでした。また、この両面ともに卓越した業績を示すCEOは少なく、企業の業績と社会面・環境面への配慮を両立することの難しさを示しています。

但し、少数ながらこの両面において卓越した成果を上げたCEOも存在しています。
例えば年間売上高270億ドルあるフランスの消費材関連の多国籍企業、ダノンを率いるフランク・リブー氏などです。リブー氏は今回のランキングの上位10%圏内に入っています。さらに、健康に良く無い食品の摂取などの社会問題に企業として取組むなどの業績が、社会面・環境面でも優れていると評価されています。

以上、世界の偉大なCEO達のランキングと、その関係要素の影響をまとめました。
次回は、国や地域ごとのランキングなど、個別のトピックをお届けします。

BY TOMB

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