ユニー・ファミリーマートホールディングス <8028> (以下、ユニー・ファミマ)とドンキホーテホールディングス <7532> (以下、ドンキホーテ)の業務提携に関する最終契約書の締結が8月24日に報じられたのは記憶に新しい。

コンビニ業界は店舗数がすでに飽和状態になっていることもあり、今回の提携はディスカウント商品を扱うドンキホーテとの相乗効果を狙うことで、業績拡大を目指しているものと思われる。

実際、コンビニは出店が続く一方で閉店する店舗も多く、入れ替わりが激しくなっている。昨今では24時間態勢にも見直しの機運が高まっているなど、コンビニ業界にとっては逆風とも言える状態が続いているようだ。

そんな中で、ユニー・ファミマの今回の事業提携は、行き詰まったコンビニ業界にあらたな風を吹き込む契機となるかもしれない。ここでは苦戦するコンビニ業界について考察していきたい。

苦戦気味のコンビニ各社、最新の業績動向は?

コンビニ大手3社の今期第一四半期の純利益は、以下のようになっている。

セブン&アイ・ホールディングス <3382>

336億2800万円(前年同期比▲22.1%)

海外北米事業が業績の足かせとなったもよう。純利益の減り方が大きいのは、事業構造改革の費用によるものという。営業収益は前年度比で微増を維持。

ユニー・ファミリーマートホールディングス

77億1000万円(前年同期比120%)

好調を維持。RIZAPグループ <2928> とのコラボ商品やFAMIMA CAFE商品が売上に貢献する一方で、買収したユニー事業における純利益が40億2000万円と大きく寄与している。

ローソン <2651>

95億9700万円(前年同期比8.8%)

でか焼き鳥などのカウンターファストフードが好調。POSシステムの導入を急ぐ。加工食品とファストフードの売り上げが業績に貢献。今後は提携したスリーエフをローソンへと転換していく。

大手3社の第1四半期は一見するとユニー・ファミマに軍配があがるように見えるが、大幅な増益はユニー買収による利益貢献が理由だ。市場予想を見返すようなサプライズ(上方修正)などもなく、利益の伸び幅という点では各社ともに少々苦戦気味と言えそうだ。

飽和するコンビニ問題打破の鍵 (1)アジア開拓と若年層戦略

飽和するコンビニ数の中で、各社は海外での売り上げをアップさせるために施策をうっている。今回、ユニー・ファミマはドンキホーテと提携したが、そこには互いの利益を底上げする目的が見え隠れする。

最近では、中国をはじめとする海外からの旅行者はドンキホーテを利用して、ディスカウント製品を購入することが多くなっているようだ。そういった意味では、ドンキホーテはインバウンド需要の高い企業といえる。

最近ではヤーマン <6630> などのように、ECサイトでの日本商品販売の好調さにより業績を伸ばしている企業も多い。

ファミリーマートのアジア店舗で、ドンキホーテで販売している製品を扱うことができれば、潜在的なインバウンド需要を海外で満たすことが可能となる。そうなれば両社にとって、売り上げと知名度のアップにつながることも想像できる。

また、ドンキホーテは国内の若者に人気の企業だ。若年層はスーパーではなくコンビニを利用することが多いため、ドンキホーテとファミリーマートをつなげることができれば顧客争奪戦で有利に立てる可能性もあるだろう。

飽和するコンビニ問題打破の鍵 (2)新型店舗

少し前にセブン-イレブンが、ゆとりのある新型タイプの店舗を導入して話題になった。実際に陳列棚をゆとりある配置にし、同時に棚の高さを低めに設定したことから日販売り上げがアップしたという結果も出ているようで、今後は少しずつ店内のレイアウトを変更する予定だという。

もともとコンビニは24時間、便利に物が買えることに重点を置き、居心地の良さは軽視されてきた感がある。特に都心部では店舗内も狭く、陳列棚の中間では人と人とがすれ違うのがやっとの店舗も多い。しかし最近は、店内に食事スペースを設けたり、店内のレイアウトを広めにとったりするなど、顧客にゆっくりと買い物を楽しんでもらう試みが随所に見られるようになっている。

商品外の側面から攻めるという意味合いでも、飽和状態にあるコンビニ業界において顧客争奪戦を勝ち抜くためのひとつの戦略となるのではないだろうか。サービス面での差別化を行うことができれば、業績面での貢献も後から付いてくるだろう。

飽和状態の脱却に必要な次の一手は?

コンビニ数が飽和状態となっている今、各社は既存の店舗の閉鎖に追われている。また、最近ではコンビニの24時間営業態勢に変更を加えるかどうかという議論も出てきている(ちなみに、営業時間にからめてフランチャイズにおけるオーナーの苦難などもたびたび話題となる)。残念ながら、どうしても国内市場におけるコンビニ事業展開は縮小傾向へと傾きがちだ。

6月にはセブン&アイが米スノコLPよりコンビニ事業を買収したことが話題となったが、今後はコンビニ事業のみならず異業種企業との事業提携や、「新型レイアウト」のような前例にない施策を講じることで業績好転への足がかりとなるだろう。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「インカムライフ.com」。著書に「超優待投資・草食編」がある