2015(平成27)年に第3次安倍晋三内閣が新たに打ち出した“一億総活躍”は、誰もが輝くことができる社会の実現を目指すスローガンのように思える。
その受け止め方は間違っていないが、他方で“一億総活躍”は「3世代同居」を推進する政策であり、それを促すための減税政策という意味合いを密かに帯びている。
『
ルポ 税金地獄
』
著者:朝日新聞経済部
出版社:文春新書
発売日:2017年3月17日
企業は法人税の引き下げと減税という2つの恩恵
それまでにも自民党税制調査会は親子2世帯同居のためのリフォーム減税を議論してきた。しかし、なかなか実現に至らなかった。安倍政権が急に打ち出した“一億総活躍”で、一気に実現に漕ぎつけることになった。
安倍政権が取り組む減税政策でもっとも知られているのは、法人税の実効税率引き下げだろう。アベノミクスに沸いた2012(平成24)年度から2014(平成26)年度までの間、日本企業は、経常利益を16兆円も増加させた。この数字は過去最高の水準だが、その一方で法人税収は1.2兆円の増加にとどまった。
法人税収が増えないのは、法人税の実効税率が37パーセントから34.6パーセントに引き下がったことが大きな理由だ。それに加えて、特例減税も2倍に拡大されている。企業は法人税の引き下げと減税という2つの恩恵にあやかる。
国民が好況感を実感していないにも関わらず日本経済が沸いているのは、そうしたカラクリがある。ちなみに、法人税は今後も下がりつづける。2018年度は、29.74パーセントに下げられることが決まっている。