公共交通網の維持が難しくなっている中山間地や離島など過疎地域でタクシーが荷物を運び、貨物車が客を乗せる貨客混載の規制緩和がスタートした。全国の国土交通省地方運輸局、運輸支局で事業認可の申請受け付けが始まっており、早ければ年明けにも新サービスが登場する見通しだ。

鉄道や路線バスで宅配便や農産物を運ぶ貨客混載は、既に全国の過疎地域で広がっている。新たな規制緩和は運送事業者の収入源を広げる可能性があり、公共交通網の維持に役立つと期待されている。

苦境が深刻さを増す過疎地域の路線バス

地方鉄道,過疎化,規制緩和
徳島県のJR穴吹駅前で発車時間を待つ美馬市営穴吹・木屋平線の路線バス。経営は厳しいが、地域の交通弱者にとってなくてはならない足だ(写真=筆者)

徳島県美馬市にあるJR徳島線の穴吹駅。土曜日の午後、四国第2の高峰・剣山のふもとにある山間部の木屋平地区と穴吹駅を結ぶ市営穴吹・木屋平線の路線バスが発車した。徳島線の列車と接続したダイヤなのだが、児童、生徒の通学時間でないためか、乗客はいなかった。

木屋平地区は旧木屋平村で、2005年に脇、穴吹、美馬3町と合併して美馬市になった。合併当時1000人を超していた人口は急激な減少を続け、8月現在で645人。65歳以上のお年寄りが全人口に占める割合を示す高齢化率は2010年で50%を突破している。

穴吹・木屋平線は民間のバス会社が撤退したのを受けて旧木屋平村が運行を代替し、合併後は市が引き継いだ。小型のバスを使用し、穴吹駅から木屋平地区を約1時間かけて1日3往復している。

市木屋平総合支所によると、年間の利用客は2016年度で約2200人。主に通学の児童、生徒や買い物、通院の高齢者が利用している。木屋平地区の交通弱者にとってなくてはならない足で、市は穴吹・木屋平線を含む3路線に年間、約1500万円の予算を組んで運行している。市に路線切り捨ての考えはないが、毎年の財政負担は頭が痛い。

過疎地域の路線バスはどこも苦しい経営に追い込まれている。国交省によると、2015年度の路線バス輸送人員はバブル期の半分以下になり、全国の6割以上が赤字。この苦境をいくらかでも緩和しようとするのが今回の規制緩和だ。