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信用情報至上の社会が目前に?中国ではアリペイ(支付宝)とそのQRコードが社会を席巻している。さまざまなモノやサービスがアリペイで決済できるようになり、アリババは毎年8月8日を「無現金の日」とするなど、現金を使わない社会の実現に向け、アリペイなどネット決済の普及の旗振り役を務めている。
そして、そうして使われたアリペイのデータは蓄積され、個人の信用力の評価に使われる。信用力評価は年々重みを増しており、信用至上の社会が目前に迫っているといっても過言ではない。その信用審査を握っているのもアリババだ。
信用力が個人の人生を左右しかねない中国社会の実情を伝えよう。
信用情報機構「芝麻信用」とは?
中国には、2015年1月に中国人民銀行(中央銀行)が設立準備を認めた8社の信用情報機構があり、その中で最も急速に広まったのが、芝麻信用である。
芝麻信用はアリババグループのアントフィナンシャルが開発した。
芝麻信用はアリペイによる決済履歴やアリババのネット通販履歴、ネット金融データ、さらに公安ネットなど公共機構のデータ、および協力機関のデータも加味して、「身分特質」「履約能力」「信用歴史」「人脈関係」「行為偏好」の5項目について個々人の点数を算出し、総合点で格付けする。予約した配車アプリのキャンセル、水道光熱費などの未払いなどがあれば、それも点数に影響する。実際の支出入を把握するだけでなく、公的機関のデータまで使えるのだから、その評価力は極めて高いといえるだろう。
これで銀行の伝統的信用データではカバーしきれなかった、信用カードのない者や学生、自由業者まで、アリペイ決済を利用している人間なら、すべて把握してしまう。
点数は最低350点、最高950点で信用の高低を5つに分類する。それぞれ、350-550を「較差」、550-600を「中等」、600-650を「良好」、650-700を「優秀」、700-950を「極好」と呼ぶ。
600点以上ならさまざまな優遇サービスも
600点以上の高い信用になると、さまざまな優遇策を享受できる。そのうち5つを紹介しよう。
1 シェアサイクルの保証金不要
芝麻信用は2017年、ofo 小藍単車、優拜単車、funbike単車、1歩単車のシェアサイクル5社とともに、650点以上の顧客に対し、保証金、利用料金とも無料という販促キャンペーンを行った。その結果を受け、芝麻信用は同年9月末、650点以上の人に対し、新しく武漢、福州、長沙など11の都市で、ofoの保証金、利用料金とも無料にすると発表した。これで650点以上のofo無料都市は25都市になった。
2 雨傘の無料レンタル
芝麻信用は600点以上の顧客に対し、保証金なしの雨天の雨傘レンタルを始めた。蘇州のケンタッキー店から始まったレンタル置き傘は、マクドナルド、コンビニにも広げ、やがて全国に展開する予定。利用方法は、QRコードを読み取るだけである。
3 電気自動車レンタルの保証金免除
PANDA用車(重慶市本社の電気自動車レンタル会社)と提携、650点以上の顧客は保証金を免除する。この操作もQRコードを読み取るだけで済む。
4 貸本サービスも保証金不要
杭州市で始まっているもので、本は宅配会社が届ける。
5 通話料後払い変更可
中国聯通(3大電信会社の1つ)と協力し、芝麻信用650点以上の顧客は、通話料先払い契約でも、後払いに変更できるなどさまざまな優遇策を得られるようにした。