アリババが2月上旬、養殖産業に進出すると発表した。その第一陣は畜産業、養豚である。アリババ旗下のクラウドコンピューティング子会社「阿里雲」と「四川特駆集団」「徳康集団」は提携し、「ET大脳」を利用した研究開発を行う。最終的には全面的なAI養豚を実現させる。一体どのような将来図を描いているのだろうか。ニュースサイト「捜狐」畜産業界ネット「捜猪網」他、多くのメディアが伝えている。

ET大脳で養豚管理

アリババ,中国経済,養殖産業
(画像=PIXTA ※画像はイメージです)

「ET大脳」とは、阿里雲の開発している人工智能である。応用範囲は、工業、都市交通、医療健康、環境保全、金融、航空、社会安全、物流とある。それを今度は養殖産業にまで拡げようということだろう。

今回の「ET大脳」は、豚を一頭ごとに、細かく相手をすることになる。品種、体重、健康、食習慣、運動記録を監視して記録する。これらのデータ蓄積は、必ず養殖業を改善するはずだ。また食事の量、排便量、叫び声などから、病気の有無を診断できる。もし病気という診断なら、処方箋をも提示する。

他のIT大手にも動きはある。

2016年「網易」は、黒豚市場にインターネット入札を導入した。売買が格段に便利となり、悪貨を駆逐し、品質や味の面でも高い評価を受けている。

2017年「京東」は、某牧場と提携し、スマート化養牛、養鶏業に進出した。100万歩走り回らせた「跑歩鶏」を生産している。

アリババの進出は、真打ち登場ともいえるだろう。

進出の背景

これらIT大手進出の背景には、何があるのだろうか。4つの原因が挙げられている。

1 利潤動機……生活水準の向上に伴って、肉類への需要は急増している。人々はさらにレベルの高い食材を待っている。例えば網易の黒豚は、500グラム50元から、京東の「跑歩鶏」は同150元からと高額だ。しかし十分な販売量と利潤をもたらしている。

2 サプライチェーンの拡大要請……アリババはネット通販だけでなく、天猫超市、盒馬鮮生など多くの新業態店舗を持っている。生鮮食品は最も重要な商品である。このことは、養殖業への参入ハードルを下げる効果もある。

3 AI研究に貢献……AI研究の深化を目指すには、データは多ければ多いほど良い。新しい分野での研究開発は、新たに大量のデータをもたらしてくれる。

4 AI養殖モデルの確立……未来の農業は、必然的に工業化する。スマート化していく。より先進的なモデルを構築したものが勝つ。アリババ、京東、網易の競い合いは、大きな意味を持つ。新たなAI産業を開くことにつながる。

アリババ効果で期待拡がる

今回、アリババと提携した特駆集団は、国内農業産業化国家重点“龍頭企業”である。同集団は2020年に、飼料の売上げ1000万トン突破と養豚頭数1000万頭突破を目標としている。IT大手との提携により、業界には巨額の投資が舞い込むだろう。そのため業界の気分は高揚している。

故郷へ帰って養豚を始め、100万元(1692万円)稼ぐのがいいか、北京にとどまって年棒10万元(169.2万円)のサラリーマンを続けるべきか?とネット上で話題となっているほどだ。

山東省で牧場の指導をしている日本人の話によると、中国の牧場では藁を使用しないなど衛生管理が悪く、家畜が病気にかかりやすいという。AI技術導入により、こうした非効率まで一気に改善されるとすれば、たしかに大儲けも期待してよいのかも知れない。早くもネット上には、養豚場開設にあたっての必要な手続きや、証明書類まで掲載されている。

とにかく最大手のアリババが乗り出した。アリババの提唱するO2O融合による新小売業の中心テーマは、生鮮のスピード宅配である。新鮮な肉類の確保は大きな武器となる。養殖業、畜産業の局面が大きく変化するのは間違いなさそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)