中国最大の電子商取引企業アリババグループ (阿里巴巴集団)。1999年に「アリババ・コム」を立ち上げたのを機に、「タオバオワン(淘宝網)」「Tモール(天猫)」「アリエクスプレス(AliExpress)」「1688コム 」など、多数のマーケットプレースを次々に市場に送り込み、瞬く間に国際舞台にのし上がった。

アントフィナンシャル・サービスグループ(蟻金融服務集団)で金融・決済市場、ツァイニャオ・ネットワーク (菜烏網絡)で物流市場にも参入しているほか、近年はAI(人工知能)・クラウド分野や医療分野への進出にも力を入れている。クラウド市場ではすでにGoogleやMicrosoft、Amazonといった欧米の大手IT企業を、成長率で上回っているというから驚きだ。

2017年第2四半期の決済は市場の予想を上回る61%増収。売上高は551.2億人民元(約円)。株主帰属の純利益177億元(前年同期比132%増)と急増した。

「アリババ・コム 」―― B2Bオンライン・マーケットプレース

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

アリババを世界の表舞台に押し上げたのは、なんといってもネットショッピング関連のeコマース事業だろう。2017年第2四半期報告によると、過去1年のeコマース事業の売上高は464.6億人民元(約7982.9億円/前年比63%増)。利用者数は前四半期から2000万人増え、5.49億人に達した。

アジア地域だけではなく世界中で最も認知度が高いのは、やはり「アリババ・コム」だろうか。世界200カ国・地域のビジネス顧客(卸売業者、小売業者、仲介業者、製造業者、中小企業、など)が利用する国際B2Bオンラインマーケットだ。

「1688コム」は国内取引を対象としており、工場直営の商品が卸値で買えるという点が最大の魅力だが、中国語が堪能でない人は万が一問題が生じた場合のことなどを考えると、どうしても二の足を踏むだろう。輸入代行業者に頼むという手もあるが、手数料や手間がかかることはいうまでもない。

国内業者は「1688コム」で仕入れた商品を、同じく国内取引に焦点を絞った「タオバオワン」で売りさばくというパターンが多いようだ。

淘宝網(タオバオワン)・天猫(Tモール)――中国市場をリード

「タオバオワン」は2003年にアリババが4.5億人民元を投じて開設したオンライン市場。中国における中級所得層増加を受け、高品質・高信用の商品を専門に取り扱うB2Cマーケットプレースの「Tモール」を2008年に立ち上げた。現在「タオバオワン」は中国最大の総流通総額を誇るモバイル市場に、「Tモール」は第3のブランド市場に成長を遂げている。

中国の中級所得層間では年々「本物志向」が強まっており、特に「Tモール」は49%増と順調に成長率を伸ばしている。両サイトの取扱い国際ブランド数は6万を超えるが、2013年には国外進出を狙い「天猫国際(Tモール・グローバル)」も新たに設立。世界中の中国人消費者をターゲットに、本国の100ブランドの国外販売も開始予定だ。

一方「タオバオワン」は現地価格=値段の安さが魅力だが、「1688コム」同様、中国語のみ対応という点が間口を狭めている。あくまで国内重視の戦略のようだ。

アリエクスプレス――日本語版もある国際B2Cマーケット

2010年に設立されたアリエクスプレス(AliExpress)は、「国外ショッピング経験がない」という人でも簡単に利用できる国外向けサイトだ。日本語(https://ja.aliexpress.com/ )・英語版のサイトが用意されており、国際eコマース市場に焦点を当てている。世界各地・地域から買い物ができるが、特に日本・米国・英国・ロシア・ブラジル・スペイン・フランスなどの消費者に人気があるという 。

ファッションからエンターテイメント、電化製品、スマートフォンまで豊富な品揃えに加え、比較的手ごろな価格帯でも消費者を魅了している。さしずめ中国版楽天市場といった雰囲気だ。

アントフィナンシャル・サービスグループ――「アリペイ」で中国決済市場を制覇

中国最大規模のオンライン決済「アリペイ(支付宝)」を提供するアントフィナンシャル・サービスグループ(蟻金融服務集団)。2008年にアリババの金融子会社として設立された。

「中国版ペイパル」と称されるアリペイの登場は、それまでユニオンペイの「銀聯カード」が牛耳っていた中国決済市場を一転させた。デジタル決済急増の波に上手くのった一例だ。

スマートフォンにアプリをダウンロードするだけで、送金・振込・決済(QRコード決済含む)などが簡単に行える利便性が受け、世界中で5億人以上 から利用されている(2017年12月データ )。

アントフィナンシャルのもうひとつの看板商品が、ユエバオ(余額宝)である。運用総資産1.2兆人民元、顧客3億人を誇る世界最大のMMFだ。少額投資でも高リターンが狙える点が人気の秘密だろう。

ほかにも中小企業向けオンライン融資マイバンクなども提供しており、今後金融市場でもさらなる多角化を視野にいれているものかと予想される。

アリババ・クラウド (阿里云) ――成長率でGoogleやAmazonを超える世界一のクラウドサービス

AmazonやMicrosoft、Googleといった米国大手をおさえ、世界一の成長率を叩きだしたアリババ・クラウドは、2009年にアリババ・クラウド・コンピューティング・カンパニーとして設立された。(ブルームバーグデータ )。

ガートナーリサーチ、 BIインテリジェンス などのデータによると、6.75億ドル(前年比126.5%増) を記録した 2016年以降、飛躍的に売上を伸ばしている。2017年第3四半期だけでも4.47億ドルを売上げ(前年同期比99%増)、アリババの総売上の約5% (前年同期比2ポイント増) を占める重要な 収入源に成長を遂げた。

有料サービスを利用する顧客も第2四半期に100万人を突破。前年同期比の2倍という成長ぶりだ。

さらなる成長の加速を狙い、同年9月には245の新商品やサービスを追加している。これらのラインナップラインアップには、大手企業向けにより高いコンピューター性能や大きなストレージの商品も含まれている。

例えば「エックス・ドラゴン(X-Dragon)」は、パフォーマンスとベアメタルサーバーの隔離機能、仮想マシンのアジリティを融合させた次世代クラウドサービスだ。

最近はインドやインドネシアにもデータセンターを開設しており、東南アジア地域のクラウド市場にも進出している。Amazonのクラウドサービス「AWS」がAmazonの収益拡大に大きく貢献しているように、いずれアリババの主要収入源のひとつに成長する可能性が極めて高い。

アリ・ヘルス(阿里健康信息) ――1年で売上7倍 オンライン医薬販売からHealthTechまで 

クラウドをはるかに上回る勢いでアリババの収益を押し上げているのは、医療事業アリババ・ヘルス・インフォメーション・テクノロジーだ。2017年3月末の報告では、売上が過去1年で739%増。6890万ドルに達した。

1998年の設立以来、本来は商品情報・追跡・認証・ロジスティックス情報サービスなどを、製造業者や消費者に提供していたが、近年はオンラインでの一般用医薬品販売やAIを活用した次世代医療テクノロジー分野にも乗りだしている。

2016年8月に中国の大手薬局グアンジョウ・ウー・チェン・ニエン・ファーマスーティカル・チェーンを買収 し、オンライン一般用医薬品販売市場に参入した。マーケティングや広告、製品開発・販売コストなどがかさみ、純損失は2億人民元(34.3億円)以上と前年から1600万人民元(2.7億円)増えているが、「中国本土の医薬品市場は世界最速で成長率しており、2020年までには世界第2の規模に拡大する」 と中国政府は見ている。

HealthTech(医療テック)にも力を注いでいる。2017年10月には国内3つの病院と提携し、アリババ初のAI医療研究所開設を発表。CATスキャン画像からAIが炎症細胞を特定する「AI診断サポート」や、病院間で安全かつ効率的に患者のデータを共有する「ブロックチェーン・データ管理プラットフォーム」など、高齢化社会を意識したソリューションの開発が目的だ(サウスチャイナ・モーニングポスト より)。

2016年5月には北京の医療情報技術企業Wanliyun メディカル・インフォメーション・テクノロジーのベ ンチャーラウンドをリードし、3500万ドルを投資 するなど 、提携企業への支援にも積極的だ。

ツァイニャオ・ネットワーク (菜烏網絡) ――最終ゴールは「世界一の物流ネットワーク」

アリババが2013年、北京のインタイム・リテール・カンパニー やコングロマリット復星国 際 などと共同で立ち上げた物流関連事業ツァイニャオ・ロジスティック(旧チャイナ・スマート・ロジスティック)。その存在はアリペイやユエバオの影にかくれるかのように、意外と知られていない。

オンラインで取引した商品を、売り手・買い手・運送業者がリアルタイムで管理・追跡できる「物流情報プラットフォーム」を提供している。サービス範囲は世界152カ国・地域、 70社の運送業者と提携し、現在一日5700万件の物流取引を取引している。

アリババは「世界一効率的な流通ネットワークの構築」という野望の元、2017年9月、53億人民元を投じて保有株式を47%から51%に引きあげる意向を発表(ロイターより )。国内24時間、国外72時間以内のスピード配達を目指し、今後後5年にわたってさらに1000億人民元を投じる計画だ。具体的にはデータテクノロジーを駆使し、国内・国際物流システムの効率化に取り組んでいる。

菜烏網絡の売上高に関する正確な数字はアリババの決算報告書 に見当たらないが、第2四半期報告では「菜烏網絡統合の効果を考慮」し、売上高成長予想を49~53%(4ポイント増)に上方修正している。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)