2017年の中国ネット界は、発展を維持した1年だった。シェアエコノミーや人工智能が興隆し、新商業の概念も定着してきた。資本市場も緩み始めた中、全産業において人材の需給は、ひっ迫している。こうした状況下、ネット産業における人材確保の最前線はどのようになっているのだろうか。アリババの若き天才の事例とともに、ニュースサイト「今日頭条」「捜狐」などが伝えた現状を見ていこう(1元=17.18日本円)。

ネット業界求人は6割増

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(画像=PR Image Factory / Shutterstock.com ※画像はイメージです。)

1月上旬、中国の就職サイト大手「BOSS」は「2017互聯網(インターネット)人材趨勢白皮書」を発表した。それによると、ネット業界の新規募集の平均賃金(月収)は18万2000円(1万600元)、前年比3.1%増だった。上位10%の平均賃金と、最低レベルとの差は8.1倍で、前年の7.9倍から拡大した。

これだけならあまり大したことはなさそうに見える。しかし実際の求人は前年比58.3%も伸びている。人材の需給は高いレベルを“徘徊”している。中でも創業間もない会社の人材需要はマックスだった。

中国ではよく、天使輪融資、A輪融資、B輪融資、C輪融資という表現をする。C輪という場合、これまで3~4回の融資シンジケートを組んだ会社を意味する。D輪以降になると上場が視野に入る。そしてこれはそのまま企業の発展段階を表すようになった。

たとえば天使輪の会社は、融資額300~600万元、企業価値1500~3000万元クラス、A輪の会社は、融資額1000~3000万元、企業価値5000万~1億5000万元クラス、といった具合だ。ネット企業の求人は、天使輪、A輪、B輪までの新興勢力で全体の66%を占められている。

職種と都市

職種別の賃金ランキングは、

  1. 音声識別 49万2000円
  2. 神経言語プログラミング(NLP)48万5000円
  3. 推存算法(recommended algorithm)47万8000円
  4. 架構師(Architect)47万2000円
  5. 算法研究員 46万6000円

となっている。このクラスの賃金は、前年比5~10%アップした。もちろん年功序列とは無縁である。日本の技術系新卒は、中国へ行った方が高給を取れそうである。

求人の多い場所も流動化している。北京、上海、深セン、広州の一線級都市は、すでに人材流失先に転じている。2017年の流失率は0.38%、前年比0.2%の増加で流失は加速中だ。反対に最高の人材吸引力を誇っているのは、杭州、成都、武漢の3都市である。この3都市で流入の27%を占め、その半分13.6%は杭州市であった。

阿里巴巴に天才現る

なぜ杭州市が断トツなのか。それは阿里巴巴(アリババ、ネット通販首位)の本拠地であることに依る。その阿里巴巴に、天才が出現したと話題になっている。主人公は朱子心、20歳である。朱氏は3歳で小学校へ入学して以来飛び級を続け、14歳で高校を卒業し、18歳で大学を卒業した。阿里巴巴に就職して2年目である。

昨年の春節、阿里巴巴のアプリを開くと、新年にふさわしい、おめでたいあいさつが聞こえてきた。しかもそれは各地で異なっていた。地元の方言になっていたのである。これは1日1000万人近いサンプルから、5日間かけて10万にもおよぶ方言イントネーションを研究した成果である。これをいとも簡単に実現したのがこの朱氏であった。

このように中国のネット界の人材争奪戦は、熾烈である。天才を育てる風土もある。日本が少し平穏にすぎるのかも知れない。早急に人材獲得に関する思考を改革すべきであろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)