中国の医療状況の惨状を変えられるか
日本人なら、中国の病院の惨状は目も当てられない。
まず受付で初診料を納めなければ、どんな重症患者も治療を受けることはできない。手術中に患者と値上げ交渉をする執刀医、過剰診療、医療事故、医師に対する金品の授与など、惨憺たる状況である。
中国の医療界は中国社会の中でも、最も切実に改善が求められているものの一つであることは間違いない。
そんな中、アリババ創業者の馬雲氏は2018年、「未来医院構想」を発表し、注目を浴びた。
彼の言う「未来医院」とはどんなものなのか。そして、果たしてそれは、中国医療を変えるきっかけとなるのだろうか。
アリババが提唱する「未来医院」とは
アリババは、浙江大学付属病院に5億6000万元の寄付を行った。そして「AIによるスマート医療サービスを推し進め、中国大衆の診療難や高額医療費の問題を解決したい」と表明した。
未来医院の中心となるのは、モバイル決済アプリのアリペイ(支付宝)を使った来院から支払いまでの一貫したサービス体系である。
患者は診療予約から初診登録などをスマホで行い、治療費支払いもアリペイで済ますことができる。治療後に医院を評価できる機能もある。また、投薬だけの目的なら、いちいち病院に行く必要はない。アリババグループの医療旗艦店を使うと、すぐに自宅まで届けてくれるからだ。
アリペイの医療システムは、まだ完全とはいえない。しかし、芝麻信用(アリババグループの信用調査会社)の信用体系を利用すれば、回復後までを見据えた、医療費支払い計画を策定できる。これによって患者の医療費支払いに関わるプレッシャーを大きく減らすことができる。
この未来医院は、オンライン、オフラインの相互通行により、すでに初歩的な実現を見ている。馬氏の構想を伝えたニュースサイト「今日頭条」は、「もう一歩進め、医療資源の配置見直しと、医療サービス水準の改善を実現させれば壮挙である。馬雲が偉大な“実践家”であることを忘れるべきでない」と記事を結び、、大きな期待を寄せた。