ノーベル文学賞が発表され、日系のカズオ・イシグロ氏が受賞して大きく報じられている。ノーベル財団は先日、今年のノーベル賞各賞の賞金を100万スウェーデンクローナ(約1400万円)引き上げ、それぞれ900万クローナ(約1.2億円)を授与すると発表したばかり。財団は財政状況が悪化していることから、2012年に1000万クローナから減額していたが、今回、状況が改善されたための引き上げとなった。

ノーベル賞を主催するノーベル財団の運営は、年に死去したアルフレッド・ノーベル博士の遺産を運用することで成り立っている。

財団は基本的に公的機関や企業からの寄付を受けつけていないため、資産運用は純粋に投資によって維持されている。インフレ調節後の目標リターンは3~5%に設定されており、エクイティや債券、ヘッジファンドを中心にポートフォリオを構成している。

1975年には運用資産が50%まで目減り

ノーベル財団は1990年、アルフレッド・ノーベル博士の遺志を受け継ぐ目的で設立された財団だ。

ノーベル財団のWebサイトに掲載された情報によると、ノーベル博士は自らの資産のほとんどを「安全証券」に託し、その利益でノーベル賞を設立するよう にと遺言書の中で細かく指示した。当時の「堅実な投資」の定義は国債などに代表される安全資産のみだったが、時代の移り変わりと共に現在は国債や不動産、担保付ローンだけではなく様々な株にも投資している。

「財政基盤を維持するために十分な高リターンを得る」 というノーベル財団の資産運用戦略は、「投資会社に類似している」という。
具体的にどのような運用が行われているのか、2016年の年次報告を見てみよう。2016年末の投下資本総額は42億SEK(約582億円)。財団が直接所有する資産、資本ポートフォリオ40億SEK(約554億円)を除外した数字だ。エクイティへの投資50%(国内11%、国外39%)、債券投資17%、オルタナティブ(ヘッジファンド、不動産ファンドなど)33%という割合だ。
設立当時の資産比較は1975年以降のデータ しか公表されていないが、この時点で運用資産が51%まで減少。その後40%台にまで落ち込み、80年代後半から一気に140%代に上昇する。2015年には237%という快挙を成し遂げた。