10月に入って、アマゾンジャパンが人工知能(AI)アシスタントのアレクサを搭載したスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾン ・エコー)」を年内に日本でも発売すると発表したのに続き、グーグルが同様のスマートスピーカー「Google Home(グーグルホーム)」の今月中の発売をアナウンスし、加えてLINEがスマートスピーカー「Clova WAVE(クローバ・ウェーブ)」の受注を開始した。
メディアでも「スマートスピーカー日米乱戦」「家庭内一等地戦争」と注目されており、早くも年末商戦の目玉になりそうな気配だ。盛り上がりを見せる日本のスマートスピーカー市場だが、先行する本場米国の様子はどうなのだろうか。
特に、「アマゾン・エコー」や「グーグルホーム」がどれくらいの人気なのか、知っておくことは日本版が発売された際の購入決定の助けになるだろう。結論から言えば、「アマゾン・エコー」が抜きん出ており、独走態勢を狙っている。その理由は何か。探ってみた。
「アマゾン・エコー」の強みの秘密
米国では、すでに6050万人が、月に少なくとも1回、スマートスピーカーを利用している。こうしたなか、米金融大手コーエンが8月に調査したデータによると、米世帯の13.5%で「アマゾン・エコー」が使われているのに対し、「グーグルホーム」の世帯シェアは5.9%にとどまっている。「アマゾン・エコー」は「グーグルホーム」のおよそ2倍のシェアをすでに持っている。
グーグルが今回投入する小型モデルの「グーグルホーム・ミニ」と、高音質の大型モデル「グーグルホーム・マックス」が、アマゾンの小型「エコー・ドット」と高音質の「エコー・プラス」を逆転できるかは、AIアシスタントの認識精度の高さ、命令をいかに忠実に実行するかという顧客満足度、価格、さらにハードウェアやコンテンツのパートナーの充実といった要素に左右される。
それに加え、スマートスピーカーの用途もかなり重要な決定要因になる。前述のコーエンの調査では、表面的には「アマゾン・エコー」も「グーグルホーム」も使い方にあまり差は見られない。
「アマゾン・エコー」を基準に見ると、1位が「音楽鑑賞」(「アマゾン・エコー」84%、「グーグルホーム」70%)、2位が「情報の要求(例えば、『カリフォルニア州の人口は?』など)」(「アマゾン・エコー」69%、「グーグルホーム」55%)、3位が「買い物リストへのアイテム追加」(「アマゾン・エコー」35%、「グーグルホーム」28%)、5位が「屋内の温度や照明の調節などスマートホーム制御」(「アマゾン・エコー」24%、「グーグルホーム」31%)など、ほとんど変わらない。
だが、4位で大きな差が出てくる。「物品の購入」、すなわちオンラインショッピングである。ここでネット通販世界最大手のアマゾンは34%と、データのないグーグルをかなりリードしている印象だ。
ある推定によると、商品無料配送や動画見放題・音楽聴き放題などの特典を提供する「アマゾンプライム」の会員数は米国で8500万人、全米世帯の3分の2を占める。ここにスマートスピーカーの「アマゾン・エコー」が入ってくることは、強力な注文の接点が一つ増え、しかもより簡単になることを意味する。自前のネット店舗を持つアマゾンにとって、「アマゾン・エコー」は売り上げ増の秘密兵器なのだ。