日本では現在、安倍政権が掲げる「一億総活躍社会の実現」を目指して、最重要課題となる「働き方改革」が急務として進められています。背景には、少子高齢化や生産年齢人口の減少がますます進み、企業の人材不足や人材獲得競争が激化していることがあります。

日本が今後、経済成長を続けるには、長時間労働の是正や生産性の向上などが求められます。安倍総理の言う「世の中から非正規という言葉を一掃する」ためには、「同一労働同一賃金」の導入や、女性や高齢者の社会進出なども重要なファクターです。

従来のように会社に長時間労働で縛られながら、個人の成果を正当に評価できない管理制度や人事評価制度のままでは、優秀な人材の海外流出は避けられません。すでに一部の優れた科学者や医者、技術者などの国外流出は始まっています。「働き方改革」が急がれる所以です。

今後求められる「働き方改革」への問題点を考えてみます。

高度成長期を支えた日本型雇用システム

(写真=Natali_ Mis/Shutterstock.com)
(写真=Natali_ Mis/Shutterstock.com)

戦後、日本の高度成長を支え、世界トップクラスの経済大国という地位を築くには、日本人の勤勉さと日本型雇用システムが重要でした。特に、「年功序列」、「終身雇用」、「企業別組合」が3本柱で、日本の高度成長を制度として支えていました。世界的にみると、このような日本的な経営システムは珍しく、日本型経営などとも呼ばれています。内容としては、主に次のような項目が挙げられます。

・ 年功序列制度
・ 終身雇用制
・ 企業内労働組合
・ 新卒一括採用
・ 系列取引
・ メインバンク制

「終身雇用」や「年功序列」制度などは当初、日本独自の伝統文化に基づく特殊な雇用慣行と見られていました。特に、企業が正社員採用した新卒者が定年まで働ける「終身雇用」は、日本型雇用システムの大きな柱でした。同じ企業で定年まで働ける「終身雇用」は、安定性から企業も人材を長期的な展望で育成でき、欧米などに比べると失業率は低いことがメリットでした。

1990年代に入ると、これまで日本型雇用システムを支えてきた社会構造に変化が起きました。日本の人口ピラミッド型構造が徐々に崩壊。少子高齢化が進み、これまでのように低賃金の若い労働力を毎年十分に供給できなくなったのです。

「終身雇用」も、長期安定による従業員の意欲の低下や企業組織の保守化が進み、労働力の高齢化に伴う賃金コストのアップも企業側の大きな負担となりました。

経営者の中には「働かせてやっている」、「給料を払ってやっている」という考え方が支配的な場合がまだ少なくありません。グローバル化が進む中、今ではこういう考え方は通用しなくなっています。このままでは、人材不足に伴う売り手市場という就職環境の中で生き残るのは難しくなる傾向にあります。

深刻な人材不足で激化する獲得競争