◉英国の教育と学生寮事情


上記で、海外に目を向けると、日本国内では見られない様々なファンドがあると述べました。
例えば、英国ではそのマーケット特性を活かして、学生寮に投資するファンドが発達しています。

教育産業に力を入れている英国では、学生数が年々増えています。

ちなみに、不況時ほど英国の学生数は増えると言われています。より良い就職機会を得るため、就職マーケットが好ましくない期間に、更なる高等教育を身につけようと大学に戻ってくる学生が多いからです。
UCASによると、2005年から2012年の間に学生からの願書は34%増加しています。2010年度では、願書数は(2011年1月時点で)58万3501 通に昇り、前年比で 5.1% 上昇しています。ここ10年間に学生数は20%増加しています。

そして、学生寮ファンドのリターンは、2011年9月時点で平均11.5%となっています。学生寮の場合、他の不動産ファンドと比べ、賃料未払いが圧倒的に少ない点が特徴的です。


◉学生寮ファンドの実例


英国の学生寮を取り扱うと言っても、ファンド会社によってストラテジーは異なります。

例えば、10年以上の実績を誇る英国の学生寮投資のマーケットメーカー的な存在であるB社は、海外の富裕層向けの戦略を取っています。住居としての魅力に欠けていた学生寮をモダンに改築し、海外からの富裕層の子息の心をくすぐって人気を集めています。
英国の大学では、通常は留学生から優先的にキャンパス内の寮に入居できるシステムになっています。そして同社の学生寮は、その利便性から申し込みが殺到するのが通例です。

同社の運営する学生寮の場合、6割の部屋が大学と契約されており、賃料が保証される仕組みになっています。また学生寮を運営から得られる室料に加えて、コインランドリーや自動販売機の使用料などの利益がファンドの収益源となっています。
英国の新学期は、9月から始まりますが、その数ヶ月前には9割の部屋が予約されています。毎年入居率100%を達成し、約10%の安定的なリターンを計上しています。

また、それ以外の会社で例えばM社では、都心部の大学周辺でキャンパス外に追い出される2年目以降の学生をターゲットにしています。キャンパスの近くに寮を建設し、オンラインで入居者を募るなどして各社様々な工夫を見せています。

以上、ちょっと変わった英国の学生寮ファンドについてお伝えしました。自宅通学の学生も多く、海外からの学生を惹き付ける魅力に乏しい日本の大学の学生寮では、このようなビジネスは難しいかもしれません。
教育産業が盛んな英国ならではのファンドと言えるのではないでしょうか。

また、別の面白い情報があればお届けしたいと思います。

BY C.O

photo credit: Prabhu B Doss via photopin cc