高島屋 <8233> は百貨店業界で3位の上場企業だ。同社の9月の月次売上は前年比8.3%増と2カ月連続でプラスを示したほか、10月10日には2018年2月通期の業績予想を上方修正するなど明るいニュースが相次いでいる。百貨店業界は「冬の時代」と呼ばれるなど厳しい局面が続いていたが、ここにきて同社の売上増加は新たな「春の到来」を示唆しているのだろうか。詳しく見てみよう。

インバウンドと高額商品が好調

大手百貨店5社が発表している月次売上高。9月はその月次売上高で大手5社すべてが前年同月比プラスに転じた。三越伊勢丹ホールディングス <3099> の5.4%増、Jフロント リテイリング <3086> の6.7%増など各社とも好調であるが、とりわけ業界3位の高島屋は8.3%増と高い伸びを示している。

高島屋の月次売上高が伸びている背景には、インバウンド客の増加で免税売上が60%増となったことが指摘される。また、指輪やネックレスといった宝飾品の売上が22%増と好調なのも特徴といえる。

高島屋に限らず、他の大手百貨店でも同じような傾向が見られる。各社ともインバウンドの免税売上では化粧品や時計が大幅に増加、加えて宝飾品や美術品、呉服、高級時計などの高額商品の伸びも顕著だ。

冒頭で述べた通り、百貨店業界は「冬の時代」と呼ばれるなど厳しい局面が続いていたが、ここにきて潮目が大きく変わろうとしているのだろうか?

営業利益はリーマンショック前の水準へ

高島屋の業績を詳しく見てみよう。先週10日、同社は2018年2月期の中間決算を発表した。それによると売上は期初予想の4480億円に対し4530億円と50億円上回り、本業の利益を示す営業利益も133億円予想から139億円と6億円上回る結果となった。

高島屋は今回の中間決算を受けて、2018年2月通期の売上を9430億円から9510億円に、営業利益を350億円から360億円にそれぞれ上方修正している。ちなみに、同社のリーマンショック前(2008年2月期)の営業利益は377億円、バブル期の1991年2月期に記録した過去最高営業利益は394億円であり、来期はそれらを視野に入れた展開もあり得るのではないかと筆者は考えている。

生き残りをかけた戦いは始まったばかり?

ところで、米国では郊外のショッピングモールが苦戦を強いられているという。外資系証券会社のリポートでは、今後5年間で米国ショッピングモールの20〜25%が消滅する可能性が指摘されている。その原因の一つとして、ネット通販の成長で客足が大きく減少しつつあることが挙げられる。日本でも近年ネット通販が広く普及していることを加味すると、百貨店業界の先行きにも慎重な見方をせざるを得ない側面もあるだろう。

そうした中で、高島屋は「まちづくり戦略」という長期ビジョンを進めている。地域と共生し街のアンカーとしての役割を発揮、百貨店と専門店の融合をすすめるというコンセプトだ。2018年から2019年にかけて行われる日本橋店の大幅改装も「まちづくり」がテーマだ。

ネット通販が広く普及する中で、大手百貨店がどのような経営戦略を進めていくのか、生き残りをかけた戦いはまだ始まったばかりと言えそうだ。(ZUU online 編集部)