消費者は単純に経済原則や需要・供給の原理だけで消費を決断するわけではない、そこには必ず心理的側面が影響する。

2017年のノーベル経済学賞には、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が選ばれた。授賞理由は「行動経済学」への貢献である。行動経済学での授賞は2人目だ。

『ヤバイ経済学』、伝統的な経済学の考え方

ノーベル賞,行動経済学
(画像=Webサイトより)

もう10年前になるが、シカゴ大学のスティーブン・D・レヴィット氏が著書『ヤバイ経済学』の中で、大相撲について衝撃的な調査結果を披露した。

レヴィット氏は11年間にわたり3万を超える割り(試合のこと)データを調べ上げ、その結果、「7勝7敗の力士と8勝6敗の力士が対戦すると、前者の勝率は8割に達する」との結論に達した。

勝率があまりにも偏っている、つまり人間は必ずしも合理的な判断・行動をとらないことをデータは物語っている。こうした手法も行動経済学の一つである。

アダム・スミスの「神の見えざる手」から始まる伝統的な経済学は、精緻なモデルを構築するために、常に仮説を用いてきた。代表的な仮説の1つが「情報の完全性」であり、もう1つが「合理的経済人」、つまり、「人間は常に合理的に自己利益を計算してに判断・行動する」との仮説である。

セイラー教授やヘブライ大学のダニエル・カーネマン氏教授をはじめとする行動経済学者は、こうした「合理的経済人」の仮説に真っ向から異を唱えている。

行動経済学とは何か