2016(平成28)年1月に日本銀行がマイナス金利の導入を発表して以降、個人のタンス預金が急増している。市中に出回っている現金は、約78兆円。そのうち、43兆円がタンス預金となっているとの試算もある。

銀行に預金をしても金利がつかないどころか、逆に目減りするかもしれない。そんな危機感が広がったのだから、タンス預金が増えるのも当然だろう。銀行などの金融機関に預けないタンス預金はデフレになればなるほど増えるとされる。

官製投資ブームに、本書は警鐘を鳴らす

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(画像=Webサイトより)

実際、警視庁が発表している“現金”の遺失物は2016年だけで36億円超だという。それだけ、金利が低下することで銀行への信頼性が揺らぎ、銀行に預けずに手元に現金として持っておきたいという気持ちが強くなるということだ。

投資なんか、おやめなさい
著者:荻原博子
出版社:新潮新書
発売日:2017年9月14日

金融機関に資産を預けても、今の金利では利子がつかない。だから、タンス預金が増える。タンス預金では紛失リスクが心配だという人は、預金から金融商品の購入にシフトする。

今般、金融庁も“貯蓄から資産形成へ”を掲げており、金融商品の購入を推奨している。2014(平成26)年から始まった「NISA」や来年から始まる「つみたてNISA」といった投資を奨励するような制度が続々と導入されるのも、政府が国民に投資を進めているからだと読み取れる。そんな国是のような官製投資ブームに、本書は警鐘を鳴らす。

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