故マイケル・ジャクソン氏も利用した「生前信託」が注目されている。これは「毎月定額で渡す」「特定の用途を指定する」など、遺言状では指定できない細かい条件が設定できる上、遺産分割協議のような面倒なプロセスを省くことが可能である。

高齢化が加速する近年、突然の死だけではなく認知症や慢性疾患によって相続対策が困難になるケースも多いと考えると、「生前信託」は現代のニーズに合った財産管理および遺産承継法といえるだろう。

遺産分割協議の必要がなく、長期的に財産を保護できる「生前信託」

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

米国では日本のように法律で定められた相続人に自動的に財産が引き継がれる「当然相続主義」が認められていないため、遺言状が文化の一部として浸透している。

ジャクソン氏の遺言状と生前信託をめぐり様々な報道を見かけるが、遺言状と生前信託はまったく別物である。

遺言状は「信託に基づいた遺産計画」と「遺言状に基づいた遺産計画」の2種類に大きく分けられる。ジャクソン氏が選んだのは「信託に基づいた遺産計画」で、遺言状の中ですべての財産を自ら設立した財団「マイケル・ジャクソン・ファミリートラスト」に信託する——生前信託を行う意向を明らかにした。

「遺言代用信託」と呼ばれることも多い生前信託は、委託者が生前に定めた条件下で財産が使われる。委託者の死後は予め指名された受託者が受理者となり、権利が譲渡される。つまり財産の所有者が委託者で、配偶者や子どもが受託者として財産を受け継ぐ。

利点としては委託者が存命中に条件などを受託者と交渉しやすく、財産自体が信託に移転しているので「死後に遺産分割協議が成立するまで遺産を使えない」といった問題を避けられる。

またジャクソン氏のように子どもが未成年であった場合、長期的な見解から財産を保護することができる。

「生前信託」はお金持ちでなくても利用できる

ジャクソン氏は2002年3月に生前信託の書類に署名後、同年7月にようやく遺言状に署名している。

2002年に作成された遺言状 はジャクソン氏の死後、米国の法律で一般公開されているが 、生前信託の内容は本来非公開が義務付けられていたはずだ。関係者からメディアに内容が流出したことは間違ない。

流出した生前信託の内容は財産の40%を母親のキャサリン・ジャクソン氏に、40%を3人の子どもに、残りの20%を寄付金とするというものだったという(The Probate Lawyer より)。
子どもには成人するまで信託財産から生活費や教育費が支払われ、30歳で3分の1、35歳で2分の1、40歳で残り全額を受けとれる。巨額の富を浪費から保護する配慮がなされている。母親の死後は母親の信託財産権も子どもに移転する。

2009年の死後、5億ドルもの借金があったと報じられたジャクソン氏だが(ウォール・ストリート・ジャーナルより )、フォーブス誌の報道 によると著作権や「ソニー/ATVミュージック・パブリッシング」の株の配当などでジャクソン氏の収入は増え続け、2016年だけでも8.25億ドルを稼ぎだしたという。

「ジャクソン氏の遺産とはほど遠いから」と躊躇せず、「個人の需要に見合った財産管理・遺産承継法」として生前信託を検討してみる——いずれこの世を去る者からの最後の愛情といえるだろう。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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