ある程度の資産を持っている人でも、家や車などの高額の商品を購入する場合、ローンを組む人が多い。資産があるのに余計な金利を払ってまでローンを組むのはなぜなのだろうか。一見すると非合理とも思える選択の理由を行動経済学の観点から見てみよう。
人は必ずしも合理的選択をしない
スウェーデン王立科学アカデミーは10月9日、米シカゴ大のリチャード・セイラーにノーベル経済学賞を授与すると発表した。セイラーは、行動経済学の研究者で、消費などの経済行動がどのように決まるのかを、心理学と経済学の両面から分析した。
行動経済学については、既に2002年にダニエル・カーネマンがノーベル賞を受賞しているが、セイラーは、人々に必要な情報を提供すれば経済行動をより合理的な方向に変えられるという理論を提唱し、実際に欧米の公共政策に大きな影響を与えたことが評価された。
セイラーの著書は、日本でも和訳されて発行されており、『実践 行動経済学』(日経BP社 (2009年7月9日)、『セイラー教授の行動経済学入門』(ダイヤモンド社 2007年10月27日)、『行動経済学の逆襲』(早川書房 2016年7月22日)などがある。
従来の経済学は、情報は完全に共有され、人々は合理的選択をするという前提で考えられているが、行動経済学は、これに異議を唱えている。それは、実社会では情報の非対称性があり、人は必ずしも合理的選択をしないからだ。経済活動をするのは人間なのだから、心理的作用を考慮して経済学は考えなければならないとする。