受給資格がないにもかかわらず、遺族年金を不正に受給していた人が1000人近く存在し、金額にして18億円の被害が出ていることが話題になっている。サンプル調査の結果がこの数字であるため、実際にはもっと多いのではないかという声も。遺族年金とは何か、なぜ過払いが発生したのかについて解説する。
遺族年金の過払い問題とは
会計検査院が2016年度までの3年間の受給者約1万人を対象に調査したところ、1000人弱の受給者が本来遺族年金の一部または全部の受給資格がないことが分かった。不正受給額は合計18億円に上るという。受給者が500万人を超える遺族年金のうち1万人のサンプル調査でこの結果であることから、実際にはもっと件数や金額が大きいことは容易に想像できる。
なぜそのようなことが起こったのか。発生の原因は「失権届」の未提出・提出遅れにある。遺族年金は受給者が再婚することや子供が18歳を超えることで受給資格を失う。受給資格を失えば資格喪失日から2週間以内に「失権届」を最寄りの年金事務所に提出する必要があるが、調べでは20名が届け出を怠っており、900人以上が期限を過ぎてから提出していた。
そのような不正や不備はすぐに気がつきそうなものだが、年金事務所は資格喪失の確認は書類上に問題がないかをチェックするだけにとどまり、住民基本台帳ネットワークや戸籍情報は行っていなかった。つまり「裏取り」をしておらず、まさにお役所仕事と言える。