企業の不祥事が相次いでいる。9月下旬、日産自動車 <7201> は国内の6工場で無資格の従業員が新車の出荷検査に関与していたことを明らかにし、西川広人社長が謝罪した。10月上旬には鉄鋼大手の神戸製鋼所 <5406> がアルミ・銅製品や鉄製品の一部で検査証明書のデータを書き換えて出荷していたことを明らかにし、川崎博也会長兼社長は後日行われた記者会見で「不適切行為で多大なご迷惑をかけた」と謝罪している。

企業を動かすのが人間である以上、不祥事が起きる可能性は常にある。ただ、特定の従業員による横領や個人情報流出等の犯罪を横に置けば、組織ぐるみの不祥事が起きるのは「企業統治が適切に機能しなかった」結果であり、その責任は経営者にあると見るのはある意味当然であろう。では、企業が不祥事を未然に防ぎ、健全に成長するためには何が必要なのだろうか。

「内輪の論理」が不祥事を招く

企業の不祥事としては上記2社に加え、オリンパス <7733> や東芝 <6502> の不正会計も記憶に新しいところだ。

オリンパスは過去の有価証券投資で生じた損失を隠すため、損失を海外企業に移し替え、企業を買収する際に資金を流用するなどの不正を行った。東芝はパソコン部品の押し込み販売やインフラ事業の工事進行基準等で利益をかさ上げした。いずれも、監査役や社外取締役などによるチェックが機能せず、負の遺産を穏便に処理しようとする「内輪の論理」が横行したことが、企業統治の機能不全を招いた一因と見られる。「内輪の論理」とはユーザー目線の欠如とも言い換えることができるだろう。

そして、今回不祥事が明るみになった日産自動車や神戸製鋼所についてもチェック機能の不在や、行き過ぎともいえる「内輪の論理」が働いていた可能性は否定できない。

たとえば、神戸製鋼所の特徴の一つに「縦割り色」の強い組織があげられる。その背景には多岐にわたる事業セグメントが指摘される。同社の2017年3月期決算で連結売上高の多かった順に挙げると鉄鋼、アルミ・銅、建設機械、機械、エンジニアリング、溶接、電力と7つの事業セグメントで構成されているのだ。各事業とも専門性が高く、人材が固定しやすいことが「縦割り色」を強める一因と考えられ、それが時として行き過ぎた「内輪の論理」を助長していた側面は否めない。

他社の不祥事を「他山の石」と受け止めること