「7割が課長になれない」40代のお金のリアル

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(写真=The 21 online)

働いても給料は上がらない、老後も十分な社会保障を得られないかもしれない……。働いたわりに報われない現在の40代は、まさしく「貧乏クジ」世代。今後、「団塊ジュニア世代」はどうなってしまうのか。さまざまなメディアを通じて格差是正を主張する人事コンサルタントの城繁幸氏に、現在の40代のリアルをうかがった。

賦課方式がすべての不公平の原因!?

最近よく聞く「世代間格差」。現在の65歳以上と20代とでは、社会保障の受益額に1億円の差があるという。今の40代の多くも不公平感を抱いていることだろう。このような不公平の原因は「賦課方式」にあると指摘するのは、人事コンサルタントの城繁幸氏だ。

「現在の日本の社会保障は、必ずしも自分が払った保険料だけで賄われていません。たとえば高齢者の生活を支える年金は、本人ではなく、現役世代が納める税金や保険料によって賄われています。このように、現役世代が現在の高齢者を支える仕組みを賦課方式といいます」

つまり、自分が高齢者になったとき、若い頃に払った保険料に見合った額の年金が返ってくるとは限らないわけだ。

「少子高齢化が進む現状では、この不公平さが解消される見込みは極めて低いですね。そもそも、出生率が2を割った70年代から、いずれ賦課方式が崩壊することは目に見えていました。本来ならもっと早く見直すべきでしたが、既得権を守るためにそれをしなかった。そして、そのバランスがついに崩れ始めたのが、『団塊ジュニア世代』と呼ばれる現在の四十代なのです」

7割は課長にすらなれない「不都合な真実」

40代が抱える問題は、年金の不公平さだけに留まらない。

「団塊ジュニアは人口が多いのに、ITバブルの崩壊で求人数が少なかった運のない世代です。当時の求人倍率は0.9程度、リーマン・ショック時ですら一を超えていました。また、年功序列で守られてきた生産性の低い人材を雇用し続けるために、この世代の給与はずっと低く抑えられてきました。ただ、年功序列、終身雇用のシステムとは本来、そういうもの。若いうちは働きに対して給与は低く、40~50代になってからはむしろ、働き以上の給与がもらえる仕組みです。

ただ、それはあくまで、会社が成長し続けるという前提があってこそ。その前提がなくなってしまった今、これまで給与を抑えられてきたのに、40代になっても給与が上がらない、という問題が起きているのです」

その象徴とも言えるのが、「ポストの減少」だ。

「40歳までに課長以上に昇進している大卒社員は、わずか26%という調査結果が、2006年の時点で出ています。調査対象となった大手企業では、おおむね40歳までに幹部候補の選抜を終えます。つまり、大卒であっても7割以上の人が生涯平社員で終わるということです。当然、給与も上がりません。

コツコツと働いてさえいれば出世の道が開け、収入もそれに応じて増えていく時代はすでに終わってしまっているのです」

ステレオタイプの幸せを捨てる勇気を持とう

年功序列の後払いシステムは崩壊し、40代の平均年収は年々下がり続けている。昇進も昇給も望めない中で、40代はどんなお金とのつきあい方をしていけばいいのだろうか。

「自分は40代だから、年収はいくらで、こんな家に住んでいなければならない……といった見栄をまず捨てることです。年収アップが期待できない以上、それに応じたライフプランを立てなくてはならないでしょう。

また、専業主婦の家庭は、奥さんに働いてもらうことも考えるべき。今なら週1日から働くことも可能ですし、どこも人手不足ですから、働き口はいくらでも見つかるはずです」

「柔軟性」という面では、以前より確実に進歩しているという。

「今では外資系や新興企業、中小零細企業など、非年功序列型の企業を選べば、年齢にかかわらずいくらでも転職できます。こうした企業は常に人材不足です。もし、現在の閉塞感に耐えられないのなら、転職を考えるのも一つの手です。ただ、そのためには、自分の強みを磨いておく必要があります。そう言うと、「自分には専門性がない」と嘆く人が多いですが、複数の職歴をミックスして強みとすることもできます。たとえば私は人事として採用と労務管理、さらにはリストラにも携わるなど、一通りの経験を持っており、大きな強みになりました。その道一筋という人はもちろんそれでよいのですが、引き出しがいくつもある人のほうが幅は広いものです。それは、転職をしない場合でも言えることです。強みがわからない人は、転職するかは別にして、転職会社に登録してみてはどうでしょうか。自身の市場価値を客観的に知ることができます」

厳しい時代だが、前向きであれば道は開けるという。

「そもそも、終身雇用で働き口が保証されることが、本当にいいのか。60歳を過ぎ、会社に与えられた仕事を嫌々こなすのは楽しいことではないはず。しかも、今の40代は年金支給開始年齢が70歳まで引き上げられている可能性が高い。40代は、人生の折り返し地点。将来のお金やキャリアをしっかり見直し、後半戦の戦略を立てるべきでしょう」

城 繁幸(じょう・しげゆき)人事コンサルタント
1973年山口県生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通に入社。2004年に独立。人事コンサルティング「Joe's Labo」代表取締役を務める。雇用問題のスペシャリストとして、「若者の視点」を取り入れた独自の主張を展開。著書に『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)、『7割は課長にさえなれません』(PHP新書)など。(取材構成:吉川ゆこ)(『 The 21 online 』2017年9月号より)

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