中国経済に関する日本のマスコミ報道をみていると、政治と結びつけた見方が目立つ。18日から共産党全国代表大会が開催されているが、これは5年に1度の大会であり、共産党の人事が発表される大事な会議である。

国務院は株式市場、金融市場の安定を保つことに腐心しているが、とはいえ、それと経済運営は別である。習近平政権における経済運営方針は、短期的な成長を追わず、経済の構造転換を進め、景気の質を高めるといった点に特徴がある。

中国は社会主義市場経済国家であり、自由主義経済国家とは経済の仕組みが細部にわたり大きく異なっている。中国経済については中国政府の官僚が最もよく知っている。

中国人民銀行の周小川行長は15日、ワシントンで開かれたIMF・世界銀行年次総会に出席。G30(世界30カ国の民間有識者からなる国際金融 を主体とした啓蒙機関)国際銀行業検討会において、「中国経済の見通し」について講演した。

周小川行長は若い頃から一貫して金融行政に携わっており、中国経済についてもっともよく知る人物の一人である。政府の代表であり、決して中立的な立場での発言ではないが、内容に関しては中国の状況を正確に表しているはずだ。今回はその一部について、要約を紹介したい。

下半期成長率は7.0%、経済のサービス化が成長を下支え

中国経済
(写真=PIXTA)

中国経済について。2011年第1四半期の実質経済成長率は10%を超える水準であったが2012年には8%前後まで低下した。その後も成長率の鈍化は止まらず、2016年には6.7%まで下落した。

ただし、今年に入り成長率は幾分回復しており、上半期は6.9%で下半期は7.0%となる可能性がある。経済成長を支えているのは、家計部門の消費である。1-8月の社会消費品小売売上高は10.4%増加している。

消費は、伝統的な商品から徐々にサービスへと移っている。第三次産業のGDPに占める割合は15年前には40%前後であったが、現在は55%まで上昇している。また、就業は安定している。1-8月の都市部新規就業者数は約1000万人であった。これは、中国の人口規模は大きく、依然として高い就業増加が必要であることを示している。

実際の企業債務は小さく、都市化による地方政府債務の肥大化が問題