両親が亡くなり、実家を相続することになっても正直言って気が進まないという人が増えている。相続不動産にかかる固定資産税などの支払いや管理等の負担を懸念する人達だ。実際に相続した場合、どのような選択肢があるのだろうか。

とりあえず放置をしてしまうと……

相続不動産,固定資産税,都市計画税
(写真=PIXTA)

実家に住む人がいなくなり、法定相続人が何人かいるとする。子がそれぞれに自分の家を持っている場合が多く、兄弟間でも話が折り合わず取り敢えずしばらくはこのままにしておこうと考える。家が存在する間は住宅用地として固定資産税も減額になる。しかしこの減税がいつまでも受けられなくなる可能性もでてきた。

放置された空き家は全国的に問題となっている。倒壊や火災の危険があるからだ。全国にこのような空き家が既に800万戸以上存在する。この事態を受け平成27年に「空き家対策特別措置法」が施行された。この法律には特定空き家の取り扱いについて規定もされている。

「特定空き家」に指定されるか否かは次の判断材料が用いられる

  1. 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
  2. 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
  3. 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
  4. その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

これらの判断基準に基づき、市町村が空き家を調査する。調査の結果「特定空き家」だと判定されると取り壊しや活用について助言や指導を受けることになる。この指導や助言に従わず何ら対策を講じない場合は「勧告」を受け、空き家の土地は住宅用地特例から除外されてしまう。固定資産税が最大1/6、都市計画税が最大1/3まで減額される住宅用地特例がなくなることは相当大きい痛手と言えるだろう。

固定資産税や都市計画税が上がるという仕組み

計算例で固定資産税にどれくらいの差がでるのか見てみる。

150平方メートルの土地に空き家がある(空き家の面積200平方メートル以下)。土地の評価額を700万円、建物の評価額を300万で考えるてみる(市街化区域内にある場合は固定資産税と併せて都市計画税も課税される)。

・そのまま放置した場合

(1)住宅用地特例を受けている間

毎年の固定資産税 5万8300円
(土地)700万円×1/6×1.4%=1万6300円
(建物)300万円×1.4%=4万2000円

毎年の都市計画税 1万6000円
(土地)700万円×1/3×0.3%=7000円
(建物)300万円×0.3%=9000円
合計 7万4300円

(2)「特定空き家」と判断された場合の課税

毎年の固定資産税 14万0000円
(土地)700万円×1.4%=9万8000円
(建物)300万円×1.4%=4万2000円

毎年の都市計画税 3万円
(土地)700万円×0.3%=約2万1000円
(建物)300万円×0.3%=9000円

合計 17万円

住宅用地としての減額が適用されなくなると、上の例では土地のみで比較すると、約5倍に上がってしまう。

取り壊しても増税に

空き家のまま放置するのが問題であるならば、取り壊して更地にしてみようと考える人もいるだろう。取り壊すことは倒壊や火災の心配はなくなり近隣の人にとっても安心できる。しかし更地にしてしまうと住宅用地ではなくなるため、上記で計算したように特例が外れた土地と同じ方法で固定資産税が計算される。建物は取り壊されるのでその分は減額となり合計は11万9000円である。空き家が存在していた場合の7万4300円から2倍弱の増加になる。

・取り壊した場合

毎年の固定資産税
(土地)700万円×1.4%=9万8000円

毎年の都市計画税
(土地)700万円×0.3%=2万1000円

合計 11万9000円

このように更地にしてしまうと取り壊し費用もかかり税額も上がる。比較的費用の掛からない駐車場に活用しようと考える人もいるが、増えるコインパーキングの数に反比例して車離れの減少が起こっている。空車ばかりの状況が続きパーキング設置の費用や管理費そして固定資産税の支払いが負担としてのしかかる可能性を否定できない。

アパート経営という節税

住む予定もなく相続しても固定資産税問題などで困ってしまうかもしれない実家については生前から節税対策をしておこうと考える人も増えた。平成26年に事実上相続税の増税になったこともあり、実家が空き家として朽ちていく前に活用し節税対策をするという考えだ。相続する子供たちが困ってしまわないように、収益物件に変えてしまうという対策である。賃貸住宅を建設すると所有者が自由に処分できない土地としてその評価額も低くなる。また実際に相続が発生した際に現金で相続するよりも不動産に変えておいたほうが評価額は低くなるため相続税を抑えることもできる。実家を承継するものがいないとわかっている家庭では今のうちになんとかしておいたほうがいいのでは……との考えだ。

節税が目的だけでは賃貸は上手くいかない

固定資産税と相続税増税問題が重なり、節税対策としてのアパート建設が急増した。更にはある程度の借入があったほうが負債として資産から差し引惹かれる。手持ちの資金と借入を併せて実家を新築のアパート経営にするという各建設会社の営業が積極的になる。構図上は実家をそのまま放置することよりも賃貸資産として次世代に承継でき税金対策にはなる。但しこれはその賃貸経営が安定して収益を得られなければたちまち返済に行き詰まる。立地も良く考えず勧められるままにアパートを建ててしまっても空室に困ることになる。サブリース契約をしているケースのトラブルもこれらが関連している場合が多い。

アパートに建て替えて賃貸物件用地として土地の評価額は下がっても新築の建物への固定資産税は決して安くはない。古家として所有していた時よりは固定資産税の総額は当然に上がる。安定して家賃収入が得られなければ結局固定資産税の支払いすらも困難にもなってくる。リスクの少ないサブリース契約で賃貸経営する人も増えたが、リース会社とのトラブルが絶えない事例である。

空き家の実家については親族にとっても確かに悩ましい問題である。しかし安易に対処を選択してしまうと、結果的には更に固定資産税や賃貸経営の不安に追い込まれることになる。第三者のアドバイスだけをうのみにせず、親族間できっちりと話し合いを重ねることが不可欠である。税負担、活用方法などは自身でもしっかりとシミュレーションした上で相続不動産への対策を選択して欲しい。(片岡美穂 行政書士、土地家屋調査士)

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