「相場は悲観の中でうまれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福感の中で消える」という相場の格言がある。
これは、昔からウォール街に伝わっているもので、投資家の相場に対する心理状態を端的に表現したものと言って良い。ここからわかることは、多くの投資家は相場の天井付近で株を買いやすいということである。
株価がおそるおそる上昇する中では株を買うことができなかったという人は多いだろう。また、株が上がりきってしまったのになぜか安心して株を買ってしまったという経験を持つ人もいることだろう。
株が上がりきった状態(天井付近)だと株価が上がりにくいばかりでなく、その後の暴落に巻き込まれてしまうこともあるので、相場の成熟期や幸福期は事前に知りたいものである。相場が一時的に天井を打つタイミングを事前に察知するために知っておきたい過熱指標をお伝えしたい。
(1)値上がり数で天井把握する「騰落レシオ」
株価が上がった銘柄と下がった銘柄の数を比率で表した指標を騰落レシオという。市場関係者をはじめ個人投資家にも広く利用されている指標で下記公式で算出される。
・値上がり銘柄数÷値下がり銘柄数×100=騰落レシオ(%)
例えば値上がりした銘柄の数が100社で、値下がりした銘柄の数が80社の場合、騰落レシオは125%となる。
一般的には相場の天井圏として120%を越えると警戒したい水準と考えられているが、本格的に株価上昇を示す時には160%程度になることもある。最近では120を頻繁に超えることも多くなっているので相場過熱のハードルが130%へと上がっているようにも個人的には感じる。
また、あくまで値上がりと値下がりの数でみているので、相場上昇と同時に騰落レシオの数値が上がっても、高値圏で株価が維持される場合には騰落レシオも次第に下がってくることがあるので注意。
(2)日経平均株価の強さで天井を把握する「NT倍率」
日経平均株価とTOPIXの関係を数値で表した指数である。
・日経平均株価÷TOPIX=NT倍率(倍)
日経平均株価が20000円でTOPIXが1600だとすると、12.5倍になる。この指数は最近は12倍代の前半で推移することが多くなっている。
日経平均株価が大きく上昇する際には、TOPIXとの乖離が大きくなり、その分数値が上がる。というのも日経平均株価は企業業績から離れて数値が一人歩きをすることもあるので、勢いよく相場が上昇する時には時価総額で計算されるTOPIXとは乖離をしやすいのだ。
過去の傾向からみると、日経平均株価が暴落する前にはNT倍率の大幅な上昇が見られることがあった。現在この数値は12.26倍であるが、この数値が12.5を大きく超えてくると日経平均株価も上がりすぎの兆候といえるかもしれない。
(3)投資家の損失割合で天井把握する「信用評価損益率」
信用評価損益率は相場の天井を占う指標としては有効なものと考えられている。NT倍率や騰落レシオが株価の値に着目するものであった反面、信用評価損益率は投資家の損益に着目をする。
・信用評価損益率(%)=信用買いをしている投資家が抱える損失の割合
相場の動きと信用評価損益率は連動しやすく、株価が上がるとこの数値が上がり株価が下がると数値は下がる。基本的にはこの数値はマイナスで推移するのだが、稀にプラスとなる場合もある(相場絶好調の時)
数値の基準としては通常時に−8から−9程度で推移、株価暴落で−15以下に、大幅な上昇で−3程度まで上がる。
こちらは相場の上昇に合わせて是非とも使用したい指標である。株価が大幅上昇していても−で推移するというところはなんとも切ないが。