トランプ米大統領が、大統領就任後初めて来日する直前の11月3日(米国時間2日)、米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長が発表されると米メディアが一斉に報じた。市場は80%以上の確率で、現在FRB理事を務めるジェローム・パウエル氏が指名されると予測している。

なぜ彼が最有力候補なのか。その理由は、パウエル氏が「米議会による金融政策の監視」を唱えてきた共和党の大統領であるトランプ氏の「金融劇場」で主役を張れる能力がある候補であることを念頭に置くと、理解しやすい。その舞台背景とは、こうだ。

イエレン現議長は利上げやバランスシート縮小などの引き締めを実行しつつも、そのスピードを緩やかに保ち、トランプ大統領が好む緩和的な金融環境をできるだけ維持してきた。だが、自らの足跡をFRBに残したいと公言するトランプ氏は、来年2月に彼女の任期が切れるにあたり、続投を許さないと見られる。

トランプ色を出すには最適の人事

次期FRB議長,パウエル
(写真= blvdone/Shutterstock.com)

トランプ大統領はFRB議長人事を、自身の権力の誇示の場として最大限に活用することで象徴的なショーにした。大統領は「この人事が市場に与える影響は大きい」と発言する一方、共和党主流派議員たちに「どの候補が次期議長に望ましいか」と挙手で人気投票させるというパフォーマンスまで演じている。

一見、トランプ氏の自己顕示のように見えるが、きちんとパウエル氏において大統領と共和党双方の政治的な要件を調和させるように仕組まれている。

パウエル氏は共和党員でありながら、金融政策決定の際にはトランプ大統領が好むハト派的な量的緩和に賛成する一方、トランプ氏や共和党が要求するタカ派的な規制緩和に理解を示す。その上、FRB内の「和」を尊重し、コンセンサスに従う柔軟性も持つ。イエレン路線を継承しつつも、トランプ色を出すには最適の人事なのだ。

パルエル氏の経歴 経済学者ではない共和党員