私たちの生活インフラとして広く普及した感のあるLINE <3938> 。実際、LINEのない生活は考えられないと思っている人は多いのではないだろうか。筆者の周りでもSkype等よりも圧倒的に「LINE派」が多い。株式市場でもLINEの人気は高く、10月27日は年初来高値を更新している。
ただ、意外に思われるかも知れないがLINEの「アクティブユーザー数」に陰りが見られる。後述するようにインターネット系企業にとってアクティブユーザー数は最重要指標の一つだ。そんな状況にありながらLINEの業績は好調、株価も上昇しているのはなぜだろうか。
MAUで世界トップクラスのLINEだが…
株式市場ではインターネット系企業を見るのにMAU(月間アクティブユーザー数)は最も大事な指標の一つとされており、その会社の株価を大きく左右することさえ珍しくない。
ちなみに、米国の大手統計会社Statistaによると2017年9月のSNS系の世界ランキングでMAUトップはFacebookの20億6000万人となっている。2位はYouTubeの15億人、3位はメッセージソフトで世界大手のWhatsAppの13億人だ。LINEのMAUは2億1400万人で世界ランキング15位、日本企業ではトップとなっている。
LINEが決算説明会で公開しているデータによると、2017年7〜9月期の主要4カ国(日本、台湾、タイ、インドネシア)のアクティブユーザー数は1億6800万人。そのうち日本が7100万人、残りのアジア3カ国で9700万人となっている。
ただ、LINEの「主要4カ国のアクティブユーザー数」は前年同期比で約4%増を示しているが、四半期ベースでは2017年1〜3月期の1億7100万人をピークに2四半期連続で減少している。普及率という意味ではピークを超えた可能性も否定できない。
株価は年初来安値から「年初来高値」へ
前述の「四半期ベースのアクティブユーザー数が減少」したLINEに株式市場の反応は冷たかった。7月27日には、その影響もあってLINEの株価は年初来安値となる3775円を付けたのである。
ところが、10月25日に発表した7〜9月期決算でLINEの評価は一変する。LINEの1〜9月の売上は17.4%増の1212億円、営業利益は33.8%増の245億円。アナリストのコンセンサス予想を10億円程度上回ったのだ。LINEは通期予想を発表していないが、アナリスト予想の通期営業利益約270億円に対し進捗率は90%を越える内容だった。LINE上場後初にして最大の「サプライズ決算」といっても良いだろう。
翌10月26日の株価はストップ高となり、27日には年初来高値となる4950円を付けた。決算発表を受けてアナリストの多くがLINEの格付けを見直す(格上げ)など文字通り評価が一変したのである。
LINEの「さらなる進化」に注目
それにしてもLINEの「四半期ベースのアクティブユーザー数が減少」する中で大幅増益を実現できたのは、なぜだろうか。
最も注目されるのが広告事業だ。LINEの広告部門の1〜9月期の売上は545億円と40%も増加し、売上構成比では45%まで拡大している。LINEといえばマンガや占い、ゲーム、スタンプ等で収益を上げているイメージを受けるかも知れないが、いまでは広告部門が「収益の柱」として育っているのだ。
その広告部門で成長が著しいのが「パフォーマンス型広告」だ。パフォーマンス型広告は112%増と倍以上の成長を示し、広告部門の構成比でも1年前の25%から38%にまで増えている。単なるSNSやコンテンツを提供するインターネット企業の枠を越え、広告会社として収益の基盤を確立し始めたLINE。今後のさらなる進化に期待したい。(ZUU online編集部)