長い人生において、何かと「リスク」はつきものです。リスクがまったくない人生というものはありません。リスクがあるからリターンがある。それは投資の世界では常識ですが、人生においてもまた、同様に言えることなのです。

では、リスクとは何でしょうか。リスクとはつまり「危険にあう可能性」や「損害が起きる見込み」ということを意味します。何らかの行動をすれば、それに応じてリスクが伴うのは自然です。大切なのは、いかにリスクを少なくできるかということに尽きるでしょう。

(写真=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)
(写真=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)

ちなみに、リスクの語源はイタリア語の「risco(船が迂回すべき岩)」にあるとされています。現代ではあまりイメージできないかもしれませんが、勘の良い人ならピンときたのではないでしょうか。ヒントは航海にあります。

かつて、世界には大航海時代がありました。特にヨーロッパを中心とした国々が、未踏の地を求めて世界中を航海していたのです。未踏の地には、誰も手にしていない宝が眠っているかもしれません。それらを求めての航海です。

しかし航海には危険が伴います。つまりリスクがあるのです。ただ、リスクをとって航海した人間だけが、はじめて宝物を手に入れることができる。それもまた真理です。リスクをとった者にしか、栄光は訪れません。

このことは、不動産投資において同様です。「こんなリスクがあるからやらない」「もし、こうなったらと思うと嫌だ」。そのように考えて、最初の一歩が踏み出せない人もいることと思います。たしかに、はじめは誰しも恐いものです。

ただ、あらゆる物事にはメリットとデメリットがあります。良い面があれば悪い面もあるのです。ここであらためて、不動産投資のメリットとデメリットを比較してみましょう。そのうえで、リスクを回避する方法をきちんと知っておけば、最初の一歩を踏み出せるかもしれません。

不動産投資のメリット

不動産投資における代表的なメリットは次の通りです。

1. 年金代わりになる
近年、日本における年金への不安は高まっています。NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会(日本FP協会)が2016年に行った調査によると、20代~50代の人は、いずれの年代においてもその8割超が老後の生活資金に不安を感じていると分かりました。

不安を感じている理由について聞いてみると、将来、年金制度が破綻してしまうのではないかという意見もありました。貯金がある人にとっても、年金制度がどうなるのかということについては、大きな関心があるとの傾向も見て取れます。

実際のところ、年金がどうなるのかは分かりません。支給年齢が伸びていることから、これから先、さらに支給が遅れるということもあるかもしれません。あるいは、受け取れる年金の額は減るということも考えられます。日本の財政状況を考慮すれば、仕方ないことでしょう。

そのような状況において、もし不動産投資をしていたらどうでしょうか。ローン返済が終了している物件については、家賃収入がそのまま報酬となります。つまり、不動産投資によって得られた利益が、そのまま年金代わりとなるのです。このような役割をするものを、いわゆる「私設年金」といいます。

2. 生命保険の代わりになる
不動産を購入する際、全額を自己資金で用意する人は少ないでしょう。大抵は、自己資金を入れつつも、銀行などの金融機関から融資を受けるのが普通です。そうすること、少ない元手でもレバレッジをきかせることができ、投資を有利に行なえます。

この融資を受ける際、加入することになるのが(任意の場合もあります)「団体信用生命保険」です。団体信用生命保険があるために、不動産投資でローンを組むことは「生命保険代わりになる」と言われているのです。いったい、どういうことでしょう。

そもそも団体信用生命保険とは、住宅ローンを組んだ人が亡くなってしまった場合、あるいは高度障害になってしまった場合に保険会社が残債(債務の残り)を当事者に代わって支払ってくれる制度です。おおむね、1物件につき1億円まで支払われます(金融機関によっては3億まで)。

このように団体信用生命保険は、生命保険と同様のはたらきをする制度となります。そのため、生命保険に加入している人は、団体信用生命保険への加入に切り替えることも可能です。そのぶん、月々の費用が抑えられるため、節約にもつながります。
ご家族には残債のない不動産が残り、そのまま家賃収入を受け取ることも、売却して現金化することも出来ます。

3. インフレ対策になる
「そうは言っても、やっぱり現金が安心」と考えている人も多いでしょう。特に日本人は、現金に対する高い信頼があります。中国をはじめとする諸外国ではキャッシュレスが進んでいますが、日本でなかなか浸透しないのも、現金への信仰があるのかもしれません。

第一生命経済研究所が行った調査によると、2016年末の段階において、家計に含まれる現金残高のうちお札として貯め込まれている(いわゆる「タンス預金」)の額は、実に43.2兆円とされています。43兆円の現金がどこかにあるなど、想像できるでしょうか。

43兆円というと、オーストラリアやスペインの国家予算とそう変わらない金額です。それだけの円が現金として保有されているのです。このことからも、日本人がいかに現金を信頼しているのかがうかがえます。

ただし、資産として現金を考えた場合、もっとも恐れるべきなのは「インフレ」です。インフレとはつまり、物価の上昇と考えていいでしょう。物価が上昇すると、現金の価値は下がります。要するに、現金で資産を保有しているだけでは、インフレに堪えられないのです。

しかも安倍政権においては、2%のインフレ目標を掲げています。いわゆる「インフレ・ターゲット」と呼ばれているものです。具体的には、中央銀行がインフレの目標を明示し、それを達成するために金融政策を行っているのです。量的緩和(通貨量の供給拡大)は今後も続いていくでしょう。

今後、インフレが進んでいくと予想される日本において、現金のみで資産を保有しておくのは危険です。不動産投資のように、インフレに連動するモノとして保有するなどの工夫をして、対策をとることが得策と言えそうです。

4. 相続対策になる
不動産投資は相続対策としてもおすすめです。相続税の観点から考えると、現金のまま相続するより建物(貸家)を相続した方が、相続税が優遇されるためです。その理由としては、いわゆる「相続税評価」が下がるためと表現できます。

現金のまま資産を保有していると、相続税評価を下げることはできません。5,000万円の資産があれば、そのまま5,000万円が相続税評価額となるのです。一方、同じ5,000万円で貸家を購入した場合、相続税評価額は約3割り下がります。その結果、大幅な節税へとつながります。

5. 現物資産である
また、不動産は「現物資産」であるということも、不動産投資をするメリットとなります。株や債券、あるいは投資信託のように、額面だけのものに不安を感じる人は多いでしょう。数字が動くだけで、自分にどれだけの資産があるのか、なかなか実感できないかもしれません。

しかも株や債券は、そのままで何かに使えるということはありません。現金と同じように、交換価値を有しているだけのものなのです。お金に価値がなくなってしまえば、まさに、紙くずと同じであると言っても過言ではないでしょう。

その点、不動産には現物としての価値があります。「借り手がいなければ自分が住めばいい」と言われることもありますが、まさに、モノとしての価値があるのということが、不動産の利点なのです。現物資産はそれが壊滅しない限り、保有し続けることができます。

6. 少ない資本で投資ができる
「レバレッジ」という言葉で表現されることも多いですが、不動産投資はまさに、少ない資本で投資が行えるというメリットがあります。銀行をはじめとする金融機関からの融資によって投資することになるので、元手が少額でも、大きな投資を行えます。

株やFXにおいても、レバレッジをきかせることは可能です。しかし、あくまでも保証金の額に基づいたレバレッジとなりますので、金額は元手に左右されます。不動産投資のように、大きなレバレッジ効果が期待できるものは、そうあるものではありません。

不動産投資のデメリット(リスク)

次に、不動産投資におけるデメリット(リスク)について見ていきましょう。あわせて、その対処法についても紹介します。

1. 「空室リスク」→需要が高い都市部のRCならカバー可能
不動産投資でもっとも想定されるリスクは、「空室リスク」です。空室リスクとはつまり、借り手がおらず、家賃収入が入らない状態のことです。そうなると、手出しでローンを返済していかなければなりません。キャッシュフローが悪化します。

ただし、空室リスクは物件選びによって対処することが可能です。たとえば、高い入居率が実現できる都心のRC (Reinforced Concrete Construction:鉄筋コンクリート造)であれば高い入居率が見込めます。その点も考慮して、物件を選ぶことが大切です。

2. 「滞納リスク」→保証会社で対応可能
家賃という観点から考えると、入居者から家賃が入らない、いわゆる「滞納リスク」もあります。いくら入居者がいても、家賃が安定して入らなければ、収入にはなりません。そうは言っても、家賃を強引にとることもできないでしょう。

そのような滞納リスクに対しては、保証会社が活用できます。保証会社とは、もしも家賃の滞納者がいた場合に、その家賃を保障してくれる会社のことです。保証会社を利用することによって、家賃滞納への不安を解消することが可能となります。

3. 「火災リスク」→火災保険で対応可能
不動産、特に建物を保有している際の不安として、「火災リスク」も考慮しなければなりません。どれだけ資産価値があるものでも、燃えてしまっては価値がなくなります。特に住宅というものは、つねに火災に対するリスクがあるものです。

そのような火災リスクに対しては、「火災保険」で対処しましょう。補償の内容は保険によってさまざまですが、費用や加入期間も含めて、最適な火災保険を選ぶようにしてください。火災保険は、不動産投資を行う方にとって、心強いパートナーとなります。

4. 「地震リスク」→エリア分散&新耐震基準の物件
とくに日本において心配なのが、「地震リスク」です。日本は“地震列島”とも言われているほど、どの地域でも地震の心配があります。都市部も例外ではありません。大きな地震で建物が倒壊してしまっては、不動産投資を継続することはできません。

地震リスクへの対策としては、まず、「地震保険」が考えられます。火災保険と同じように、地震保険にも種類があります。ただし、全損と認められるかどうかは状況によりますし、価格が高いという懸念点もあるのが実情です。

そこで、エリアを分散しておくのがオススメです。不動産を各地に保有していれば、地震のリスクを分散することが可能となります。あるいは、「新耐震基準」に則った頑丈な建物を選ぶなど、工夫することが大切です。

5. 「価格下落リスク」→立地選定が重要
不動産投資の主力はインカムゲインですが、キャピタルゲインを狙う人もいるでしょう。その際、物件の価格が下落してしまう可能性も考慮しておくべきです。バブル期のような大幅下落はそうありませんが、経年によって、下落する可能性はあるでしょう。

価格下落に対処するためには、立地の選定が重要となります。購入する物件の相場をきちんと確認し、価格が下落する確率を調べておきましょう。不動産業者にきちんとヒアリングを行えば、価格下落リスクを未然に防ぐことも可能です。

リスクを想定してリターンを得よう

このように不動産投資にはメリットもデメリットもあります。大切なのは、メリットとデメリットをしっかりと把握したうえで、意思決定をすることに他なりません。どちらか一方だけを見るのではなく、バランスよく検討する姿勢が欠かせないのです。

投資の本質は、リスクをとってリターンを得ることにあります。ギャンブルのようにハイリスク・ハイリターンになるのを避け、計画的な準備をしつつ、ローリスク・ローリターンを目指すのが理想です。不動産投資ではあれば、それを実現することができるのです。

あらかじめ不動産投資にはリスクがあることを認識したうえで、どうすればよりリターンを得られるのか考えてみましょう。こと投資においては、“勇敢さ”よりも“賢明さ”の方が勝ちにつながりやすいとされています。慎重に検討したうえで、行動に移しましょう。

(提供: Incomepress

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