中国、モンゴル、インド、韓国、日本などを送電線で結んで、太陽光、風力による再生可能エネルギー電力を供給する、アジアスーパーグリッド構想が実現に向けて動き出した。去る10月、SBエナジー(ソフトバンクグループの子会社)とモンゴルの投資会社(ニューコム)との合弁会社であるクリーンエネルギーアジアの風力発電所が営業運転を開始した。当面、モンゴル国内の需要をまかなうが、将来的には、同発電所だけでなく、アジア各国の再エネ発電所からの電力を、スーパーグリッドによって、都市部などの電力需要急増地域に供給する。

同構想が実現すると、アジア地域での電力需給のアンバランスが緩和され、日本での電力供給不足にも貢献すると期待されている。

ソフトバンクの孫正義氏が提唱

風力発電,太陽光発電
(画像=Webサイトより モンゴルの風力発電所プロジェクト「Tsetsii Wind Farm」)

アジアスーパーグリッド構想は、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が2011年に提唱したもので、再生可能エネルギーの普及と同時に、アジア内陸部と都市部、先進地域と後進地域との電力需要格差を解消することに大きな目的がある。日本などへの送電は海底ケーブルを利用する。

アジア地域には、太陽光発電や風力発電に適した内陸部の砂漠地帯がある一方で、沿岸部には、電力需要の急増している大都市が集中している。中国では、沿岸部の大都市周辺では、電力の大半を石炭火力がまかなっており、大気汚染などの環境問題を引き起こしている。そのため、同国では、石炭火力を削減し再エネ電力の導入促進政策を進めている。

アジアスーパーグリッド構想は、そうした中国の政策や、モンゴル、インド、東南アジア諸国の電力需要増大への対応に役立てる目的で打ち出された。太陽光発電や風力発電は気象条件に左右される変動電源であるが、広域的な運用によって、変動を平準化することが可能となる。

今回、営業運転を開始したクリーンエネルギーアジアは、2012年11月、モンゴル・ウランバートル市に設立された。資本金は400万ドルで、SBエナジーが49%、ニューコム51%の出資比率となっている。事業としては、自然エネルギーの開発地点の適地選定や、自然エネルギー発電所の建設に向けたフィージビリティ・スタディ(企業化前調査)及び自然エネルギーの開発などである。一方、モンゴル投資会社のニューコムは、ウランバートル市に本社を置く、インフラ投資会社である。傘下に電気通信事業、航空事業、従来型エネルギー事業や自然エネルギー事業などを担うグループ企業を収めている。ニューコムは、モンゴルにおける自然エネルギー開発のリーダーであり、同国初の事業用ウィンドファーム(風力発電基地)(出力5万kW)を建設している。

クリーンエネルギーアジアの今回の風力発電所は、風況や日照条件の良いゴビ砂漠で、同社の所有する22万4000ヘクタールの土地利用権を活用して建設された。この土地は、東京都の総面積にほぼ匹敵し、今後、風力発電所だけでなく、太陽光発電所などの建設も予定されている。

欧米では国際送電網が普及

自然エネルギー財団(会長・孫正義氏)によると、各国間をつなぐ送電網は、国際送電網として欧州、米国では大幅に普及している。イギリスと欧州大陸、北欧諸国と欧州各国とは海底ケーブルで結ばれている。アジアではそれほど普及していないが、地域的には、ロシアとモンゴル、中国とモンゴルなどの間で、送電網が設置されている。アジアスーパーグリッド構想は、北東アジアをつなぐ国際送電網の建設であり、自然エネルギーをアジア全域で活用
することを目指している。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の2016年報告書では、モンゴルからゴビ砂漠にかけての地域は、自然エネルギーの最適地であり、風力と太陽光の発電ポテンシャルは中国と日本の総電力需要の2倍より大きいと推定されている。

アジアスーパーグリッド構想は、実現までに、送電網の建設や、各国の利害の調整など、課題は多いものの、各国の再生可能エネルギー導入に拍車がかかることは間違いなさそうである。(西条誠、エネルギー・経済ジャーナリスト)

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