煮付けても焼いても、酢でしめてもおいしいサバ。関サバなどのブランドサバも人気です。そんななか、佐賀から新しいブランドサバ「唐津Qサバ」が誕生しました。完全養殖に成功したおかげで脂のりがよいのはもちろん、刺身としても安心して食べられます。ここでは、佐賀県唐津市の「唐津Qサバ」を紹介します。

そもそもサバってどんな魚?

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

サバは大衆魚として、さまざまな食べ方をされてきました。焼く、煮物、汁、揚げるなど、どんな料理法もよく合います。ただ、天然のサバには食中毒の原因となる寄生虫アニサキスが含まれているため、昔から「あたりやすい」といわれてきました。鮮度が非常に重要なため、全国的には加熱調理が主流です。

佐賀で誕生した「唐津Qサバ」

生食に向かないとされるサバ。しかし、九州北部の玄界灘地域では郷土料理「ゴマサバ」として生のまま食べられています。これは、ゴマと醤油、砂糖、みりんの甘いタレの中に新鮮なサバの切り身を漬け込む料理です。また、西日本の沿岸部で、新鮮な魚が手に入りやすい地域では刺身としてよく出されます。地方の食文化が全国へと即座に発信される現代、サバの生食のニーズは高まりつつあります。

佐賀では、玄界灘や有明海の漁業不振が深刻です。県内の漁業生産額や漁業経営体数は減少傾向が続いていて、有明海の海苔養殖業者以外は厳しい状況が続いています。とくにサバの漁場である玄界灘に面した松浦海区では、抜本的な漁業改革が求められていました。そこで佐賀では魚の養殖による漁業振興の必要性があったのです。

漁獲時期や海域によって品質が変化する天然のマサバを養殖すれば、年間を通して脂ののった鮮魚を市場に送り届けることができるようになります。しかも養殖魚の卵からふ化飼育をする完全養殖なら、天然資源に頼ることなく人の手で一貫して養殖魚を生産し続けられます。佐賀が恒常的に抱える漁業不振を解決する大きな一手となる可能性を秘めています。

「唐津Qサバ」ができるまでとその特長

かねてより、唐津市の水産漁業活性化支援センターは、九州大学との先端的な産学共同研究を続けてきました。そんななか誕生したのが「唐津Qサバ」です。エサを人工管理できる完全養殖はアニサキスによる食中毒リスクを回避することができます。2017年10月現在で出荷された約2万尾から、アニサキスはまだ一例も見つかっていません。

また、養殖魚はエサに応じて脂のりを調整できるメリットがあります。天然サバは漁獲のタイミングによって脂のりが変わりますが、「唐津Qサバ」なら一尾あたり20%以上もの脂質含量を誇ります。このほか、養殖場から活きたまま出荷が可能なため、抜群の鮮度のサバを食べることができるのです。

地元唐津で広がる「唐津Qサバ」

メリットの多い完全養殖サバの登場により、地域の食文化はすでに変わりつつあります。「唐津Qサバ」の流通量が増えるにしたがって、地元唐津の旅館や飲食店では活魚料理にサバを提供するようになりました。2017年10月現在、唐津市内の23店舗で「唐津Qサバ」を扱っており、サバの生食が珍しい全国からの観光客に好評です。また、「唐津しーまーと」や「唐津うまかもん市場」などの直売所では鮮魚のまま購入も可能です。

最近では唐津市だけでなく福岡市の料理店にも「唐津Qサバ」を提供する店が現れてきました。福岡市から火が付き、全国的なブランドになる日もそう遠くないかもしれません。

生産体制の拡大に期待

「唐津Qサバ」はようやく生産体制が整ってきたものの、まだ唐津市内の旅館や飲食店では提供数に限りがあり、来店前に事前に連絡してほしいとのこと。残念ながら今のところいつでも食べられるまでには至っていません。ただ、2017年の出荷量は2016年の出荷シーズンの3?4倍を見込んでいて、いよいよ「唐津Qサバ」が一部でしか食べられない「幻の魚」から市場の拡大を狙える段階に入ってきました。今後、全国的に流通することが期待されます。

「唐津Qサバ」のおかげで安心して生サバが食べられる時代になりました。これまで生サバ文化は九州北部や限られた地域だけのものでしたが、刺身や生食料理として広く味わえる日がきっと来ることでしょう。

(提供:JIMOTOZINE )