京都伝統の京町家に投資家や企業の視線が集まっている。京都市を訪れる観光客が増え続け、宿泊施設が不足しているためで、投資家の組合や企業が出資して1棟貸しの宿泊施設に改装する例が相次いでいる。三田証券やワコールなど異業種から参入する例も後を絶たない。

市中心部の商業地は地価の上昇が続いており、全国の上昇率トップ10に市内5カ所が入った。市は京町家保全・継承条例案を市議会に提出するとともに、所有者と活用希望者をマッチングする事業を検討している。京町家の活用にはますます追い風が吹いてきた。

14人の出資者が京町家をリノベーション

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京町家を改修し、中京区にオープンした「蔵や聚楽第」。京都の財産ともいえる京町家には投資家や企業の熱い視線が注がれるようになった(写真=筆者)

京都を代表する観光名所・二条城近くの中京区聚楽廻東町。かつて平安京の大極殿、豊臣秀吉の政庁・聚楽第があったこの場所に9月、築100年以上の京町家をリノベーションした宿泊施設「蔵や聚楽第」が開業した。

外観は京町家の面影を残すが、中は高級感あふれる和テイストの宿泊施設。南北2棟あり、それぞれを1棟貸ししている。1階にリビング、2階に寝室を設け、最大8人が宿泊できる。料金は5人で1泊した場合、1人1万円程度。安い料金ではないが、施設を運営するアールスクウェアは「中国、台湾など外国人の富裕層に好評」という。

この京町家は投資家によるプロジェクトで再生された。三田証券が1口100万円、10口からの不動産小口化商品として投資家を募り、法人、個人合わせて14の出資者が京町家任意組合を組織している。投資家へのリターンは宿泊売上高を原資に、年2回実績に応じて分配する仕組みだ。

京町家リノベーションを不動産小口化商品とすることや、投資家による京町家再生は珍しい。三田証券不動産本部は「京都は観光都市として魅力的なマーケット。京町家を保存する社会貢献にもなり、当面は投資先として有望」とみている。近く第2弾となる事業も検討しているという。

三田証券のほか、京町家のポータルサイトを運営するJITホールディングスなども東京都や大阪市で定期的にセミナーを開き、京町家への投資を募っている。

観光客急増で不動産価格が急上昇