政府税制調査会では、民泊やメルカリ販売など新しいタイプの取引に対して、いかに税逃れを防ぐか議論している。民泊は不動産投資の一形態として注目されているが、所得分類は不動産所得ではないことに気をつけたい。

民泊経営は届出が必要

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(写真=PIXTA)

同じ不動産経営でもアパート経営のような住居の貸し出しであれば、基本的に家具家電は入居者で用意してもらい、長期間住んでもらうことになる。通常の持家と同様に不動産登記などを行い、また所得申告のために税務署に申告・届出を行うことはあっても、不動産貸付業特有の許認可や届出があるわけではない。

ところが民泊の場合はホテル・旅館のように泊まってもらうのが基本であるから、部屋だけでなく家具家電を用意し、宿泊料金をもらうことになる。これは個人で行うにしても、図面などを添えた旅館業の許可申請が必要であり、東京都大田区・大阪府のような民泊特区であれば、特区民泊の認定申請が必要である。食事を提供する場合は食品営業許可も必要になる。

儲けを出すためにはAirbnbに登録して多くの観光客に泊まってもらうことも考えるだろうし、食事を提供している場合は万が一食中毒を出したりすれば、事業者として責任も問われる。

なお、2018年6月15日に住宅宿泊事業法が施行された後は、年間180日上限でも良ければ、旅館業許可という形でない民泊の届出もできハードルは下がる。いずれにせよ許可・届出により行う以上は、立派な事業である。

民泊は事業に当たるため不動産所得でなく事業所得または雑所得

不動産所得はあくまでも入居者への不動産貸付によって、月々安定した収入を得た場合に該当するものである。民泊のような事業は、本業であれば事業所得、副業であれば雑所得として申告する必要がある。

勤務先で年末調整が行われるサラリーマンの場合、副業として20万円以下の所得しかない場合は、確定申告は必要なく住民税の申告を行うことになる。副業であっても不動産所得であれば、損失を他の所得と相殺できるメリットがあるが、雑所得は同じ雑所得内でしか相殺できず、メリットが限定されてくる。

給与所得は1,000万円・不動産所得50万円の損失・所得税率20.42%・住民税率10%のケースであれば、所得と損失の相殺で所得税・住民税あわせて15万円程度の節税効果がある。不動産所得で無く雑所得で50万円の損失があっても、この節税効果はない。

シェアリングエコノミーに対する課税逃れ対策の議論も進む

2017年9月26日に開かれた政府税制調査会では、民泊・メルカリといったシェアリングエコノミーの事業に関しては取引状況の把握が難しいため、課税逃れを防ぐための方策を検討し始めた。

Airbnbのような仲介業者に、取引状況の報告を求めるというものである。既存の取引においては、例えば個人に対して年間で賃料15万円以上支払った法人(もしくは個人の不動産屋)に支払調書を提出してもらう制度などがあり、この支払調書で一定規模以上の不動産所得を把握している。

同日の政府税制調査会ではシェアリングエコノミーの他にマイナンバー制度に関しても議論している。

支払調書にはお金の受け取る側のマイナンバーを記載することになっているが、所得捕捉に活用するというマイナンバーの性格から考えると、今後Airbnbなどの仲介業者が取引状況を報告するにあたって、民泊経営者のマイナンバーをAirbnbに提供するようになることも予想される。

国税当局にはすでに情報技術専門官というポストがあり、このような税務調査官がシェアリングエコノミーの脱税摘発にさらに寄与していくことを後押しすることになろう。

許可を取らず民泊を経営することは取り締まる方向になってきたが、さらに税務当局も適正な課税に向けて動きつつある。新しい形態の稼ぎ方は法の抜け穴になっていたが、法整備は進んでいる。税逃れ防止に関してはマイナンバーが加速させていくことも意識すべきだ。

また所得税や住民税とは別に、地域によっては宿泊税が導入されていることにも気をつけるべきだ。東京都や大阪府が導入しており、京都市・北海道・金沢市などでも導入に向けた動きがある。これは宿泊料金に応じて税額が決まるものであり、民泊も対象となる。(石谷彰彦、ファイナンシャルプランナー)