年金と聞くと、決められた保険料を払い、決められた年金額を受け取るものと思っていないだろうか。実は、任意の選択によって年金を増やす方法がある。最も簡単なのは「個人年金」や「確定拠出年金」に加入することだが、ここでは、公的年金を増やすための方法について紹介する。

2年で元が取れる「付加年金」 その他「国民年金基金」とは?

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(写真=PIXTA)

年金には、自営業者等が加入する「国民年金」とサラリーマンなどが加入する「厚生年金」がある。厚生年金の場合、報酬に比例して保険料も上がるので年金を増やすためには収入を上げればよい。

他方、国民年金の場合には、収入に関わらず保険料は一定なので、受け取る年金額も原則として同じになる。つまり、どんなにお金持ちであっても、平成29年度でいうと年間779,300円(満額)しか年金はもらえないのだ。

ただ、国民年金でも年金を増やす方法がある。それが「付加年金」と「国民年金基金」だ。付加年金とは、国民年金の保険料に加えて「付加保険料」を納付することで、老齢基礎年金を多く受け取ることができるという年金だ。保険料は、1か月400円と安いので気軽に始めることができる。付加保険料を納付すると「保険料を納めた月数×200 円」の年金を受け取ることができる。

たとえば、30年間付加保険料を支払った場合、保険料納付総額は「400円×12か月×30 年=14万4000 円」になる。この時、受け取れる年金額は「200円×12か月×30 年=7万2000 円」となる。月額で換算すると6,000円も多く年金をもらうことができる。

しかも、保険料総額が14万4000円なのに対し、年金額は7万2000円なので2年で元が取れる。そのことから、「2年で元が取れる年金」と言われている。2年で元が取れるので、50歳からでも十分間に合う。ただ、加入できるのは国民年金の第1号被保険者(保険料免除者・国民年金基金の加入者を除く)、及び任意加入被保険者に限られる。

次に、「国民年金基金」の活用が考えられる。国民年金基金は、国民年金と厚生年金との格差を解消するために任意で加入できるものだ。1口の掛金は年齢によって異なり、上限は6万8000円である。途中で2口目以降の分については減額や増額も可能なので、収入に併せて調整はできるが解約できないので加入する際は慎重に検討して欲しい。掛金は全額所得控除の対象で、税金対策としても有効である。

なお、「付加年金」と「国民年金基金」は併用できないので、どちらか一方しか加入することはできない。付加年金の加入をやめることは可能なので、とりあえず付加年金に加入して後で国民年金基金に加入するということはできる。

「任意加入」と「年金繰り下げ受給」

50代で直ちにということではないが、年金額を増やす方法として「任意加入」と「年金繰り下げ支給」がある。

国民年金は、60歳まで保険料を納めるが、受給資格期間を満たしていない場合や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合、60歳以降も引き続き国民年金に加入することができる。これが「任意加入制度」だ。保険料は第1号被保険者と同額である。

たとえば60歳から5年間任意加入した場合、保険料を16,490円(平成29年度)として考えると「16,490 円×12か月×5年間=989,400円」払うことになる。

受取年金額は、「基礎年金額×(60までに保険料を納めた月数+任意加入の月数)/480 月 」となる。5年間任意加入した場合、「60月 / 480月 = 0.125」が増加になる。平成29年4月からの基礎年金額は779,300円なので、年金の増加額は「779,300円×0.125=97,412円」ということだ。

65歳から10年間年金を受け取る場合には、「97,412円×10年=974,120円」、15年受け取る場合には、「97,412円×15年=1,461,180円」になるので十分支払った額以上を受け取れる。ただ、10年未満の場合には受取額の方が少なくなるので、健康に自信がない人は慎重に考える必要がある。

年金繰り下げ支給は、年金額を増やすために年金を受け取る時期を遅らせるというものである。つまり、65歳から支給される年金を65歳で受け取らないで、たとえば70歳から受け取るというものだ。月数に応じて1か月0.7% 最大5年間で42%増加する。

仮に5年繰り下げて受給する場合、平成29年度の基礎年金額は779,300円なので、「779,300円×(1+42%)=1,106,606円」になる。したがって、増加分は、「1,106,606円-779,300円=327,306円」ということになる。

65歳から70歳の間、年金を受け取っていたとしたら、「779,300円×5年=3,896,500円」になるので、増加分で割ると、「3,896,500円÷327,306円=11.90」になるので、12年以上受け取らないと元は取れないことになる。このケースの場合、70歳から受給して82歳以上生きる自信があれば、加入した方が得ということになる。

もっとも、このケースは、最大の場合なので極端になっているが、65歳ですぐに受け取らなくてもいい場合には、1年以上であれば1か月単位で後ろにずらせるので、追加の保険料を払わず年金額を増やせるという意味ではメリットはあるだろう。

なお、一度繰り下げ受給したけれども通常の受給がよかったという場合、いつでも繰り下げをストップして、過去分の年金を受け取ることもできるので、その点は心配いらない。

以上のとおり、年金を増やすためのいろいろな制度があるので、この記事を参考に賢く選択してほしい。(ZUU online 編集部)