伝統的な住文化を継承しつつ、省エネなど環境負荷の低減を図るサステナブル住宅。国土交通省はこのほど、今年度第一回の気候風土適応型サステナブル住宅の先導的なモデル住宅として、「東京の土壁の家」と愛媛県の「土間と風の家」の2件を採択した。

サステナブルモデル住宅は、木造住宅を対象に広く民間から提案を募り、補助金による支援を通じてサステナブル社会の形成を図るのがねらいである。サステナブル住宅としては、今後、「IoT活用型」などのタイプも検討され、募集される見通しである。

伝統的な木造・省エネ住宅

サステナブル住宅,国土交通省
(画像=Thinkstock/Getty Images)

国土交通省のサステナブル住宅は、サステナブル建築物等先導事業の補助対象となる住宅で、伝統的な木造建築技術を応用しつつ、省エネの工夫や環境負荷低減対策を施していることを要件としている。専門家等で構成される同事業の評価委員会で採択が決まる。

補助金は、掛かり増し費用を補助する形で実施される。掛かり増し費用は、サステナブル住宅の建設工事費と、そうでない場合の工事費の差額を指し、今年度の場合、差額の2分の1が補助金支給額となる。

サステナブル住宅の要件のひとつとされる省エネに関しては、近年、建築物のエネルギー消費量が他部門に比べて増大していることから、大きな課題となっている。国内のエネルギー需給は、2011年の東日本大震災以降、いっそうひっ迫しており、産業や運輸部門でのエネルギー消費量が減少・微増する半面、建築部門の消費量は大きく増加している。2015年の場合、建築部門の消費量は産業部門(45%)についで、32%と全体の3分の1を占めている。そのため、住宅をはじめ建築部門での省エネ対策の抜本的強化が不可欠となっている。

今回採択された2件の住宅は、そうした省エネの観点に加え、住みやすさ、快適性、気候風土への適応性など、環境へのやさしさなどを総合的に審査して採択された。2件は、具体的にどのような建築で、どの点が評価されたのかを、詳しく見ていく。

自然素材を用い耐久性に配慮した住宅「東京の土壁の家」

建設地は東京都練馬区。2階建て、延べ床面積は100.66平米。土塗り壁、木造軸組み工法のほか、屋根、壁、建具、畳などについて自然素材を用いて耐久性に配慮している。地域の職人の手による伝統的な構法で家を構成している。南北方向に吹く夏季の風向特性に配慮し、南面に掃き出し・全開可能な開口部を設けたほか、通風を促すための多様な窓、引き戸などを採用した。降雨や夏季の日差しに対して、深い軒・庇、緑化などの措置を講じた。特に降雨に対しては、屋根下地に自然素材を用いて耐久性の向上に配慮した。周辺の農地などに配慮して、地域の景観の保全・継承にも努めている。(設計:シティ環境建築設計/東京都練馬区)

近隣との付き合い方に配慮した土間空間を採用した「土間と風の家」

建設地は愛媛県松山市、2階建て、延べ床面積は117.53平米。礎石の上に柱を設置する石場建て木組土塗り壁による伝統構法。地場の素材や伝統的な職人技術を取り入れるとともに、後継者育成のための積極的な若手起用による技術継承の機会とした。西風が吹く地形・風向特性に配慮し、西側に主開口を配置した。深い軒・庇と窓から離れた位置への簾の配置など、低い高度から侵入する日射熱の遮蔽と通風の両立に配慮した。夏季の蒸し暑い気候に配慮し、土塗り壁などの構造を採用し、通気・乾燥が見込める開放的な床下工法(石場建て)を用いた。冬季の気候に対しては、引き戸を利用して部屋を区切って使う住まい方を提案している。地場で製作される木製建具の採用や土間の設置などが評価される。特に土間は、伝統的な暮らし、近隣との付き合い方などに配慮した空間として特徴的である。(設計:野の草設計室/愛媛県今治市)

今回採択された2件の住宅は、いずれも木造、土壁等を採用した伝統的な日本住宅である。近年、さまざまな住宅メーカーから、高断熱、高機能住宅などが発売されているが、本来、日本の夏蒸し暑い気候に適した住宅は、こうした伝統的な住宅であり、環境にやさしいサステナブル住宅ということができる。同省は、採択されたモデル住宅を、ひとつの参考例として、今後、広くこの種の住宅が普及することを期待している。(西条誠、エネルギー・経済ジャーナリスト)

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