葉巻(シガー)の名前や形状は知っていても、吸ったことがないという人が大半ではないだろうか。かつては映画やドラマなどで男のダンディズムを象徴する小道具としてよく使用されていた。禁煙や分煙などが進む現代、たばこを好む愛煙家は肩身の狭い思いをしているだろう。こうした中で、葉巻について考えてみたい。

たばことの違い 豊かな香りを楽しむのが葉巻の吸い方

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(画像=PIXTA)

葉巻が紙巻たばこ(シガレット)と大きく異なる点は、外側がたばこの葉で巻かれていることだ。紙巻たばこよりは喫煙の時間が長いため、ゆっくりとリラックスして紫煙をふかし、芳醇な香りを楽しむことが一般的な葉巻の吸い方である。また、葉巻の先端を切り取るシガーカッターや火をつけるマッチ(ライター)、葉巻を乾燥から守るシガーボックス、葉巻専用の灰皿、持ち運ぶためのケースなどの小道具にこだわるのも楽しみのひとつだ。

葉巻の吸い方は大まかに、3つのステップに分けることができる。「葉巻の吸う側をカットする」「葉巻に火をつける」そして「葉巻を吸う」だ。細かな注意は多々あるが、基本的な流れはこれで大丈夫である。

まずは、葉巻の口が閉じた丸い部分(ヘッド)をシガーカッターで2~3mm切断する。次に、葉巻用のマッチやガスライターで火をつける。オイルライターやリンの強いマッチなど、葉巻の香りを損なうものは使用しない。また、葉巻は紙巻きたばこよりも火がつきにくいので注意が必要だ。あとは、ゆっくりと時間をかけて葉巻をふかす。肺まで煙を入れる必要はない。煙の香りを楽しめばよい。

葉巻の価格はピンからキリまで

葉巻の始まりは古代の中央アメリカが発祥とされている。現在でも葉巻に使われているタバコの葉を生産しているのは主に熱帯地域を中心とした国々だ。具体的にはキューバ、ドミニカ共和国、ニカラグア共和国などが挙げられる。日本で手に入れることができる葉巻の種類と価格をピックアップしてみた。

キューバ産の「コイーバ(Cohiba)」。日本ではカストロ議長と呼ばれることが多いフィデル・カストロが愛好していた高級銘柄である。一時期は流通がわるく幻の銘柄と言われていた時期もあった。現在、人気のシリーズは「シグロ(Siglo)」だろう。安価な「シグロ1」なら1本1900円で手に入る。最高峰の「マデューロ5 ヘニオス(Maduro5 Genios)」は1本5400だ。

キューバ産の「モンテクリスト(Montecristo)」。フランスの小説家アレクサンドル・デュマの名作「モンテクリスト伯」にちなんで命名された銘柄だ。キューバの革命家チェ・ゲバラが愛用していたことで有名である。販売数が多い「モンテクリスト No.4(Montecristo No.4)」で1本1600円となっている。

キューバ産の「ロメオ Y ジュリエッタ(Romeo y Julieta)」。ウィリアム・シェイクスピアの有名な戯曲「ロミオとジュリエット」から銘柄名がとられた。イギリスの政治家ウィンストン・チャーチルが愛好していたことで知られている。繊細な香りの「ミルフレイユ(Mille Fleurs)」で1本1200円、看板商品とも言うべき「チャーチル(Churchills)」が1本3100円である。

他にも、ジョン・F・ケネディが愛用者のひとりであったキューバ産の「H.アップマン(H. UPMANN)」や、ドミニカ共和国産の「ダビドフ(DAVIDOFF)」など、数多くの銘柄が世界中の葉巻ファンに楽しまれている。

都内で葉巻を体験できるシガーバー

葉巻は香りが強く、煙の量も多いため、屋外はもちろんのこと、喫煙可能なレストランなどであっても吸いにくい。ゆったりとした時間を葉巻と過ごすためにはシガーバーがおすすめである。都内のシガーバーをいくつか挙げてみる。

「ル・コネスール 銀座本店」。ル・コネスール(Connaisseur)とはフランス語で「こだわり」の意味である。銀座だけではなく「六本木店」「渋谷店」「赤坂店」「丸ノ内ホテルTOKYO店」「グランドプリンスホテル高輪店」と展開している。

「バー スピリッツ」(新橋)。JR新橋駅から徒歩2分と場所にある。公式サイトに「シガーの味わい方からマナーまで、丁寧にレクチャーさせていただきます」とあるように初めての方にも優しいバーの雰囲気だ。

「シガーバー コイーバ アトモスフィア」(西麻布)。「コイーバ(Cohiba)」のオフィシャルライセンスショップである。ドリンクやフードのメニューも充実しており、葉巻を気楽に楽しめる。

「シガーバー シャドネィ」(明治神宮前)。1997年に創業されたシガーバーだ。売りのひとつに「Cigar Bank(シガーバンク)」がある。名前の通り、お客のシガーコレクションを預かってくれるサービスだ。老舗ならではの安心感がある。

紹介した店以外にも多くのシガーバーがある。興味のある方は一度体験してみてはいかがだろうか。ただし、注意して欲しいことがひとつ。葉巻は嗜好品である。周囲の人に迷惑をかけないよう配慮するのが「オトナ」の常識だ。常識を守れないのは論外である。また、健康あっての趣味なので、くれぐれも吸い過ぎには注意したいところだ。(吉川敦、フリーライター)