将棋ブームで盛り上がる「テーブルマークこども大会」
史上最年少のプロ棋士にして、プロ史上最多の29連勝を記録した藤井聡太四段の活躍をはじめ、映画『3月のライオン』のヒットなど、今年は将棋に関する話題がニュースになっている。
そんななか、いま大きく注目を集めている将棋大会があるのをご存じだろうか。それは、『将棋日本シリーズ「テーブルマークこども大会」』。「将棋日本シリーズ」とは、プロの公式戦の一つである「JTプロ公式戦」と、子どもたちが実際に将棋を指して学ぶ「テーブルマークこども大会」が一体となった将棋イベントで、毎年全国11の会場で行われている。その「テーブルマークこども大会」が、このところの“将棋ブームで例年にない盛り上がりを見せているという。来る11月19日(日)に幕張メッセで行なわれる「東京大会」をPRする記者会見の様子を交えて、この大会について紹介しよう。
多くのプロも経験。世界最大の将棋大会
全国11カ所の会場で行われる「テーブルマークこども大会」。2017年は、6月に行われた「北陸・信越大会」を皮切りに、既に10会場での開催が終了。いままさに将棋が世間の耳目を集めていることもあり、各会場とも、昨年を大きく上回る子どもたちが参加した。
そしていよいよ、11月19日(日)には、「東京大会」が行われる。昨年は約2,600人の子どもたちが参加した最も大きな大会である。2012年には、「同時に1カ所で行われた将棋の対局数ナンバーワン」(対局数は1574局)として、「ギネス世界記録」として認定されている。名実ともに「世界最大の将棋大会」といっていいだろう。
またこの大会が注目される理由がもう一つある。それは、この「テーブルマークこども大会」の参加者から、いま注目のプロ棋士たちが輩出されていることだ。
先に触れた藤井聡太四段は、2011年の東海大会・低学年の部の優勝者。また、その藤井四段が公式戦の連勝記録を29に伸ばすなか、30勝目を阻んだ佐々木勇気六段は、小学校三年生の時に2003年の東京大会・低学年の部で優勝し、翌2004年には高学年の部でも優勝している。
そして、2017年第58期王位戦で羽生善治王位を破り、自身初のタイトルを手にした菅井竜也王位は、2002年の岡山大会・高学年の部で準優勝し、翌年、翌々年には2年連続で優勝している。ほかにも、多くのプロ棋士、女流棋士、タイトル保持者が「テーブルマークこども大会」を経験している。
とはいえ、この大会は決して、プロを目指すようなハイレベルな子どもたちだけのためのものではない。対局は、低学年部門/高学年部門に分かれて、3勝すればトーナメント戦へ進出する。敗れてしまったら、そこからは「自由対局」に移り、いつもと違った相手と自由に腕を磨くことができる。
今年からは、ブロック対局に参加せず自由対局のみの参加も可能になった。初心者で、まだ棋力が十分には身についていない子どもでも大会に参加できるわけだ。
記者会見で挨拶に立った日本将棋連盟の佐藤康光会長も「大会の規模だけでなく、親しみやすさもこの大会の大きな魅力」と語る。ブロック対局、トーナメント戦を勝ち抜いた子どもたちは、その際は和服に着替え、プロと同様の環境で決勝ステージを戦う。「プロの目から見ても、非常にレベルの高い将棋が繰り広げられます」と佐藤会長。実際に経験した子どもたちにとっては誇らしく、またその様子を見守る子どもたちにとってもまさにあこがれの舞台と言えるだろう。
対局以外の催しもたくさん!丸1日でも飽きないイベント
記者会見では、総合プロデューサーを務める大会事務局の稲葉眞弘氏から、改めて今年の大会の盛況ぶりについて説明があった。
「これまでの大会の参加者は昨年の約四割増し。会場によっては、キャパシティー以上の申し込みがあり、予定よりも申込み〆切を早めたところもあった」という。東京大会も例年以上の子どもたちが集まるのは確実だろう。
また対局以外の催しについても説明があった。まず、自由対局に参加した子どもたちには、オリジナルの「駒型消しゴム」がプレゼントされる。全種類集めたいという子どもも多く、自由対局に参加する大きなモチベーションになっているようだ。また抽選により、プロ棋士や女流棋士、奨励会の会員から指導を受けながら対局できるコーナーもある。今回の東京大会では、昨年の150名から210名に定員をアップし、より多くの子どもたちに参加できるようにするという。
またスポンサーであるテーブルマーク社の冷凍食品を試食できるコーナーもあり、人気を集めている。テーブルマークの商品などが当たるクイズラリーも実施されるなど、親子で楽しめるイベントも用意されている。
また、東京大会だけの新企画として、ロボットとの対局を体験できるイベントも実現。「電王手一二さん(でんのうしゅいちにさん)」という双腕型の将棋代差しロボットで、これまでのロボットに比べて、よりスムーズ、かつ正確な着手が可能という。将棋ゲームとはまた違った、新しい形の対局を体験できることだろう。
常人では不可能な想像力とスピード。プロの“超絶思考”を目の当たりに
そしてこの大会の魅力を語る上では、「プロ棋士」の存在について述べないわけにはいかないだろう。「目隠し詰め将棋」というイベントでは、目隠しをしたプロ棋士が、女流棋士が読み上げる「盤面配置」と「持ち駒」を聞いて、頭の中で盤面を想像しながら詰め将棋を実施する。常人であればまともにゲームすることさえできなさそうだが、それを悠々とこなしてしまうのがプロ棋士。記憶力や回答のスピードなど、卓越した能力を目の当たりにすることができる。
そして、何より、こども大会の後に行われる「JTプロ公式戦」は絶対に見逃せない。これは、JT杯覇者(前回優勝者)と、2017年2月28日時点での日本将棋連盟公式戦のタイトルホルダー、および平成28年賞金ランキングの上位の棋士の計12名で争われるトーナメント戦のこと。公開対局による早指し戦という形で行われるため、一瞬も目が離せないスリリングな対局をすぐ目の前で観戦することができる。
11月19日(日)の東京大会では、その「JTプロ公式戦」の決勝戦が行われる。今年は、昨年のJT杯覇者である豊島将之八段と、山崎隆之八段の戦いになることが決定している。豊島八段が連覇を達成するのか、それとも山崎八段が初優勝を果たすのか、多くの観客が見守る中繰り広げられる、静かで熱いプロの対局に期待したい。
あの超有名棋士が登場!強くなれるアドバイスを伝授
記者会見の終わりには、「ひふみん」の愛称で大人気の加藤一二三九段が特別ゲストとして登場。集まった報道陣の雨のようなフラッシュを浴びていた。
加藤九段とこの「将棋日本シリーズ」の縁はとても深く、1980年の第一回大会から出場し、優勝2回、準優勝2回を誇る。その後は「こども大会」の解説棋士も努められたそう。
将棋界のレジェンドの一人である加藤九段から見ても、「こども大会」のレベルの高さは目を見張るものがあるという。藤井四段との対局によって、お茶の間にも一気にその名が浸透した“ひふみん”だが、「これから、この『こども大会』からますますたくさんのプロ棋士が育ってくるのでは」と、後進のさらなる充実に期待をしていた。
将棋を学んでいる子どもたちへのメッセージとして「入門書をしっかり読みましょう。将棋は基本を学べば絶対に強くなります」というアドバイスもあった。「間違いのない手を打てば、将棋は絶対に勝つことができると悟ってプロ棋士を目指した」と語る人の言葉だけに説得力がある。「基本を大切に」というのは、子どもたちだけでなく、将棋を趣味にしている大人にも響く言葉ではないだろうか。
今年は、東京ビックサイトから幕張メッセに会場を移し、11月19日(日)に開催される『将棋日本シリーズ「テーブルマークこども大会 東京大会」』。丸一日将棋の魅力を堪能できるこのイベント、親子でぜひ、体験してみてはいかがだろうか。
将棋日本シリーズ「テーブルマークこども大会」および「JTプロ公式戦」の詳細は以下のホームページで。
https://www.jti.co.jp/knowledge/shogi/index.html
THE21編集部(『The 21 online』2017年10月24日公開)
【関連記事 The 21 onlineより】
・「町工場の星」はいかにして、ピンチを好きになれたか
・世界的コンサルタントが語るモチベーションの源とは?
・習慣化するコツは「手数」を減らすこと
・「たった5%」の情報でも、仮説を立てて即断即決する
・なぜ今、ハーバードで「日本」が注目されるのか?