喫煙率の長期的な減少傾向で国内市場の縮小が続く中で、たばこ業界が望みをつなぐのが加熱式たばこだ。利益率も紙巻たばこより高い加熱式たばこだが、ここにきて暗雲が漂っている。2018年度税制改正検討における、たばこ税の増税だ。

先行アイコスを2ブランドが追随

加熱式,たばこ
(画像=PIXTA)

加熱式たばこは、電気で加熱した葉たばこを吸う、新しいタイプのたばこだ。フィリップモリスインターナショナルが、2015年秋にアイコスを、東京・愛知・大阪など12都府県で発売を開始した。その後、2016年4月には全国展開を実現し、市場を開拓した。加熱式たばこは煙が出ないことに加え、専用カートリッジにカプセルを挿入して吸うスタイルが受け、売上を急速に伸ばした。その後、JTがブルーム・テック、ブリティッシュ・アメリカンタバコがグローを発売している。

なぜ加熱式たばこは税額が低いのか

紙巻きたばこは、国税・地方税合わせて12.2円のたばこ税が課せられる。1箱20本として244円に相当する。一方、加熱式たばこの場合は税率が低く設定されている。その事実が、4月に行われた参議院の国会答弁において明らかにされた。

1箱(20本)当たりでは、一番安いプルーム・テックで68円、グロー151円、一番高いアイコスでも226円で、紙巻きたばこより安い。一方、一箱当たりの小売価格は440円前後で大差ない。紙たばこの税額は、ブルーム・テックの実に3.6倍に相当する。なぜこれだけの開きが出るのか。

財務省ホームページによると、たばこ税では、たばこを紙たばこ、パイプたばこ、葉たばこ、刻みたばこなどに区分している。紙たばこは1本あたり、紙たばこ以外は、重量1グラムを単位として12.2円が課税される。ちなみに加熱式たばこはパイプたばこに分類される。加熱式たばこは、紙巻きたばこと比較すると重量が軽い。アイコス一箱当たりスティック重量が15.7グラムに対し、グローは9.8グラム、プルームテックは2.8グラムでり、その結果たばこ税は安くなる。

このまま加熱式たばこの普及が広まると、現在2兆円あるたばこ税収が確保できなくなる可能性が高まる。課税当局が黙っているはずもなく、次年度に向けて既に増税の動きがある。「加熱式タバコが完全に定着する前に手を打っておこう」との考えだ。

喫煙率は低下してもたばこ税収は確保

厚生労働省調査によると、成人男子の喫煙率は、昭和40年代初めには8割を超えていた。その後一貫して減り続け、平成28年には3割を切る水準(1400万人相当)にまで落ち込んでいる。

売上の落ち込みも激しい。財務省統計によると、紙巻きたばこの販売数量は、直近ピーク(平成8年)の3500億本から、1800億本に半減した。ところが、喫煙率低下・販売数量減少にもかかわらず、たばこ税収は多少の変動はあるものの、一貫して2兆円を確保している。政府は平成10年、15年、18年、22年と、実に4度にわたり税額を引き上げ、たばこの消費落ち込みにより税収減を補填してきた。

財務省にとって、たばこや酒の嗜好品は「財政物資」だ。税収確保のために、いつでも増税できるという位置づけられている。

来年度に向けて増税の動き

2017年11月7日、日本経済新聞の報道によると、財務省は、加熱式たばこへの課税額を引き上げる案を検討している。それだけではなく、紙巻きたばこも1本あたり3円引き上げる腹積もりだ。10%消費税率引き上げと同時に導入に合わせて生鮮食品などには軽減税率が適用される予定だが、その税収減を補填しようとの算段だ。12月中旬以降にも公表される2018年度税制改正大綱に盛り込む計画で、動きが進んでいる。

帝国データバンク調査によると、オフィス内を全面禁煙とする企業はすでに22%に達した。完全分煙の企業と合わせると3/4に達する。愛煙家にとっては、なんとも生きずらい世の中になってきた。(ZUU online編集部)