2017年7月、銀座5丁目の価格がバブル期を超えたとしてニュースでも話題になりました。2016年以降、都心部だけではなく郊外の地価の上昇が目立っています。

今回の記事では、不動産投資を考えるうえで参考にするべき地価情報についてご説明します。郊外地価の上昇の理由と、今後の見通しについて考えます。

首都圏郊外の地価上昇傾向

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(写真=WHYFRAME/Shutterstock.com)

2017年の政府発表によると、首都圏をはじめとした都市部のみならず、郊外でも地価の上昇する地点が増えています。

毎年、国土交通省では1月1日時点での公示地価を公表しています。それによると、東京・名古屋・大阪の三大都市圏において住宅地および商業地の地価が上昇しています。全国的に見ても、全用途平均の地価変動率は2年連続の上昇です。

国税庁が7月に発表した路線価でも、同じような傾向が見て取れます。全国最高となった中央区銀座5丁目銀座中央通りでは、前年比+26.0%という大きな伸びを記録し、バブル期の地価水準を突破しました。全国的に見ても、標準宅地は前年比+0.4%と、8年ぶりの上昇となった2016年に引き続いて2年連続で上昇しています。

首都圏では、東京23区のみならず郊外でも地価が上昇しています。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)近くに位置する千葉県の君津市で+5.5%、木更津市で+2.9%(いずれも住宅地)と、高い伸びを記録しています。首都圏のみならず、郊外でも地価の上昇する地区が目立つことには、どのような理由があるのでしょうか。

郊外で地価が上昇する二つの理由

郊外でも地価上昇が目立つ要因には、二つの理由があります。一つはインターネット通販の拡大、もう一つは国債利回りの低下です。インターネット通販の拡大によって、巨大物流施設のニーズが高まっています。圏央道などの交通の要所に近いところでは物流施設の建設が相次いでおり、郊外の地価を押し上げる一因となっています。

こうした物流施設の開発は、アメリカ大手のプロロジス、2017年7月に中国系5社連合による買収に合意したシンガポール大手のGLPなど、外資系物流施設大手がリードしています。日本の物流施設は小ぶりで旧式のタイプが多く残り、インターネット通販の拡大によって物流施設の需要が高まると見込んで積極的な投資を続けています。

マイナス金利政策による国債利回りの低下も、郊外地価の上昇に一役買っています。金融機関の資産運用先として、国債ではなくリートと呼ばれる不動産投資信託にお金が流れ込んでいます。2017年9月時点で、リートの上場銘柄数は59銘柄、時価総額は11.3兆円に達しています。一時期に比べると時価総額も落ち着きつつありますが、それでも5年前(2012年9月)の約3倍にも膨れ上がっています。

資金の豊富なリートは、地方物件への投資を増やしています。都心物件よりも利回りが高いとされていることから、物流施設への関心も強めています。

郊外地価の今後の見通し

物流施設ニーズの高まりや国債利回り低下を背景とした郊外地価の上昇ですが、今後も上昇が続くかどうかは不透明です。物流施設へのニーズは引き続き高いと予測される一方で、地方の人口減少と長期金利の上昇が懸念材料として残ります。

総合不動産サービス大手のJLLによれば、インターネット通販の裾野はますます広がっていることから、関東地方の物流施設への新規需要は2020年まで年平均で15万坪と想定されています。供給が年平均30万坪強と、需要を上回る高水準が続くものの、賃料自体は堅調に推移すると予測しています。

しかし、人口減少による地方経済の活力減退で、郊外の地価下落圧力がますます強まる恐れもあります。物流施設の過剰供給が続く中、どこまで地価上昇が続くのかは疑問点が残るといえるでしょう。不動産投資を考える際は、こうした点も踏まえて投資判断を下す必要があります。

加えて、2017年に相次ぐアメリカ政策金利の利上げに伴い、日本でも長期金利が上昇する可能性もあります。そうすると、リートに流れ込む資金量が減ることが予測され、不動産市場の活況に影を落とすかもしれません。

地価の上昇傾向はどこまで続くかが焦点

2017年に公表された公示地価や路線価の情報によると、大都市圏だけではなく郊外でも地価の上昇傾向が見られます。その理由は、インターネット通販の拡大に伴う郊外物流施設建設へのニーズが高まっただけでなく、国債利回りの低下によってリート(不動産投資信託)に資金が流れ込んだからです。

今後は、物流施設の過剰供給が続くうえに利回り上昇の可能性も出てきているため、郊外地価の見通しについては不透明感が残るでしょう。

(提供:THE LIFES

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