本のタイトルであるエイジノミクスとはageing(高齢化)とeconomics(経済学)を合わせた造語で「超高齢社会における成長の可能性を探る試み」という意味だ。ミクロ・マクロ経済学の大家である八田達夫、吉川洋が編著者として本書で主張する内容は、悲観的に捉えがちな日本の高齢化はエイジノミクスによりチャンスに変えられるいうことだ。

超高齢社会をイノベーションの源泉として経済成長を進めるために必要なことは何か。日本の今後を考える上で必須の論点を提示している。

「エイジノミクス」で日本は蘇る
著者:吉川洋(編著)、八田達夫(編著)、高橋琢磨(共著)、岡本憲之(共著)
出版社:NHK出版
発売日:2017年7月11日

データが示す日本の潜在能力

2015年時点で日本の総人口に占める高齢者(65歳以上)の比率は25%以上ですでに超高齢社会に突入しており、2060年には38%まで上昇すると考えられている。社会の高齢化は社会保障や財政の負担となり、労働人口の減少が経済成長の限界を招くと一般的に言われることが多い。

本書はそのような主張を全否定しないまでも、先進国の経済成長は人口の多さではなく、イノベーションによる「1人当たりの所得の上昇」が生み出すこと、50年後でも日本の労働力は十分に存在するという根拠に基づき正しい見方ではないと反論する。

経済学的には人口と経済成長はほとんど関係がない。これは日本の高度経済成長期を見ると特に分かりやすい。この頃(1955~1971年)の平均成長率は10%だったが、人口増加率は1%、労働力人口の伸びも1.3%で経済成長の要因のほどんどが労働生産性の上昇だったのだ。

日本の生産年齢人口は2015年は7728万人で2065年には4529万人に減少する。労働人口の減少は人手不足を引き起こすが、この人手不足こそが省力化の技術開発や投資を促進し、生産性を高めることにつながる。また、4529万人という数字は現在のドイツやフランス、イギリスといった国々と比較してもさほど変わらない。現在ヨーロッパの国々が経済成長できているように、日本も成長の余地は十分に存在するのだ。

高齢化がイノベーションの源泉になる