不動産経営において、経費の大きな割合を占めるのが修繕費です。修繕には、大規模修繕とメンテナンス修繕があり、前者は屋上や外壁、給排水の工事など、マンションを維持していくために必要な修繕を指しています。建物や設備は時間が経つことで劣化するため、計画的に修繕を実施していく必要があるのです。

そのためには、長期的な修繕計画を立案し、日頃から着実に修繕費用を積み立ていくことが大切です。 不動産投資は家賃という収入がありますが、当然、修繕を始めとする費用も発生します。ただし、修繕などの費用がどのタイミングでどの程度、発生するかを予測して対応することができることは不動産投資のひとつのメリットです。将来、発生する費用をあらかじめ想定して計画的に資金管理することが重要なのです。

しかし、修繕の計画を持たず、積立金を準備していないオーナーも珍しくなく、いざ必要になったときに工事の費用がない……という残念なケースも耳にします。そうならないために、今回は大規模修繕の基本について、一から説明したいと思います。

不動産経営に修繕は不可避

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(写真=Stock-Asso/Shutterstock.com)

マンション、アパートなどの不動産を経営するにあたっては、利益を出すために長期的な視点で物件を管理することが重要です。そして、経年によって老朽化する建物の機能を維持するためには、適切な対策が求められます。

風雨や紫外線、気温の変化にさらされる外壁や屋根、長年の使用で汚れや傷が目立つようになる階段などの共用部分、鉄筋をはじめとする建物内部の各種部材など、修繕を必要とする箇所は多くあります。どれか一つでも疎かにすれば、入居率に影響するのみならず、建物の耐震性にも問題を及ぼしかねません。

また、上下水道管や換気扇といった生活に欠かせない配管や設備のほか、部屋内部では長年の使用で劣化するエアコンや水回りなどもメンテナンスが必要になります。近年では、インターネット回線の点検が必要になるケースも多いようです。こうした設備の修繕・管理は、生活水準を保つ上で欠かせないものです。

このように修繕箇所は多岐にわたるため、どこがいつどのように劣化していくのか、将来予想される修繕工事を綿密に計画する必要があります。積立金を計算しなければ、利回りはよく見えますが、この費用は不動産経営のランニングコストの一つであるため、必ず準備しなければいけない費用になります。

国交相が作成した修繕項目の概要

建物や設備の修繕項目については、国土交通省の策定した「長期修繕計画標準様式」を参考にすることで適切な計画作りと積立金の設定を行うことができます。

その中では、建物の修繕項目が以下の16項目に分けられています。

・ 屋根防水
・ 床防水
・ 外壁塗装等
・ 鉄部塗装等
・ 建具・金物等
・ 共用内部
・ 給水設備
・ 排水設備
・ ガス設備
・ 空調・換気設備
・ 電灯設備等
・ 情報・通信設備
・ 消防用設備
・ 昇降機設備
・ 立体駐車場設備
・ 外構・附属施設
・ その他

これらの項目は、上位で三つに区分され、屋根防水から共用内部までが「建物」、給水設備から立体駐車場設備までが「設備」、外構・附属施設が「外構他」となります。また、16の項目の中には複数の部位から構成されているものも多く、例えば屋根防水の下位の部位は「屋上防水(保護)」「屋上防水(露出)」「傾斜屋根」「疵・笠木等防水」とされています。

修繕費用と時期の見積もりの方法とは

大まかな修繕項目が把握できたら、次のステップは修繕費用と時期の見積もりです。マンションの分譲業者や修繕業者が提示するケースも多くありますが、自分でも理解することで能動的に修繕工事に携わることができます。

費用については、過去に工事の実績があれば、その価格を参考に算出できます。実績がない場合には、部位ごとに管理会社に相談するという方法もあります。時期については、「共用照明器具は約10~15年」など一般的に理解されている修繕周期も多く、こうしたものは管理会社に確認するのがスムーズです。中古マンション・アパートの場合は、前回の修繕時期を調べることも一つの判断材料になります。

修繕費用は計画的に積み立てる

修繕にかかる費用や時期の目処が立ったら、修繕スケジュールを年単位で策定し積立を進めましょう。必要な修繕費用を計画期間(月数)で割り、各戸の負担割合に応じて月当たり・一戸当たりの修繕積立金を算出します。

マンションの機能を維持し、入居者の満足度を高めるような修繕が進められるように、計画的かつ適切に資金をマネジメントすることを心がけることが肝要です。(提供:Incomepress

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