観光立国を掲げていた第2次安倍政権が発足した当初、政府は訪日外国人観光客の目標を2020年までに2000万人を達成するとしていた。

円安誘導という金融政策や五輪開幕を目前に控えた観光インフラの整備、そしてビザの緩和といった多岐に渡る政策で、中国・韓国・台湾・香港などから多くの外国人観光客が押し寄せるようになった。政府が目標に設定していた2000万人は軽々と達成し、2020年までに4000万人に上方修正された。

そうした外国人観光客が日本経済に与えるインパクトは、もはや無視できるレベルではなくなっている。2015年には、訪日中国人観光客による“爆買い”が社会現象にもなり、同年の流行語大賞にも選ばれた。

消費大陸アジア
著者:川端基夫
出版社:ちくま新書
発売日:2017年9月5日

外国人観光客,ハラール
(画像=Webサイトより)

観光客を取り込む「綿密な戦略」が必要

ピーク時に比べれば、中国人観光客による“爆買い”の勢いは沈静化しているが、それでも東京の銀座・渋谷、京都や大阪といった都市では中国人観光客を多く見かける。そして、中国人観光客が消費する金額は日本経済に欠かせないものになった。

今や中国のみならずシンガポール・マレーシア・インドネシアといった東南アジア諸国も経済成長が著しく、そうした新興国からも続々と訪日観光客が押し寄せている。今後、日本の観光業をはじめ、サービス業・小売業はこうした東アジア・東南アジアの観光客を取り込む戦略を綿密に練る必要に迫られるだろう。

実際、浅草・上野といった外国人観光客が多く押し寄せる東京・台東区は官民一体でそうした需要を取り込む動きが始まっている。 一例を挙げれば、イスラム教独自の文化とされる“ハラール”だ。イスラム教では、豚や酒を口にすることを禁じている。

国や人によって信仰心には濃淡あるが、そうしたイスラム教徒が安心して口にできる食品などに付与される“ハラール認証”制度がある。日本では“ハラール認証”の馴染みは薄く、認知度も低い。そのため、イスラム教徒が日本を旅行するときには、食事にも一苦労を強いられる。ハラール認証が定着すれば、イスラム教徒の不安が解消されることになり、イスラム教徒の多いマレーシアやインドネシアからの訪日客増加が見込める。

海外進出を成功させるカギは「適応化戦略」