中国では新しい産業、新しい企業が厳しい自由競争の中から、次々と発生しているとこれまでの連載で伝えてきた。規制のないジャングルのような世界で、生存競争が繰り広げられている。
国土は広く、人口は多い。規模が大きいといった点で日本とは大きく異なる。しかし、それ以上に大きな違いは多様性があるという点である。それは経済でも同様である。
しかし、それは中国という巨大な国のイチ側面にしか過ぎない。国家の強いリーダーシップによって経済がけん引される“国有企業が国家の根幹産業を握っている”といった側面を見ていこう。
【過去の連載はこちら】
・日本人が知らない中国最前線
ハイテクは自由、基幹産業は管理
国有企業改革の基本的な政策の中に“抓大放小”というものがある。直訳すれば、大きなものはしっかりとつかみ、小さなものは離すということだが、その趣旨は、国家が管理した方が有利な少数の重要産業、企業については集中して管理するが、そうではない企業については市場経済に任せるといった意味である。
抓大に当たるのは、電力、石油・天然ガス、鉄道、航空、通信、軍需、海運、薬品流通、鉄鋼、石炭、非鉄金属など。こうした産業では、中央政府が管理監督する国有大型企業が中核となっている。
国有企業の経営に問題がないわけではない。改革開放が始まってから現在に至るまで国有企業改革が延々と続けられている。現在では、株主所有構造を変えるべく、混合所有制改革が集中的に行われている。
株主として国内外の民間資本を取り入れることで、株主が企業に対して求める収益最大化の要求レベルを押し上げるとともに、コーポレートガバナンスを強化し、企業としての総合力を高めようという趣旨である。簡単に言ってしまえば、民営化を更に進めるといったことであるが、あくまで国家が企業を掌握した状態で効率化を図るのであって、最終的に完全な民営化がゴールではない。
共産党は10月に行われた共産党大会で、長期経済計画を発表している。今世紀中頃までに“社会主義現代化強国”を作り上げるとしている。社会主義を現代化することで強い国家にするといった意味である。もう少し具体的に言えば、中国は国家の基幹産業においては国有企業を残し、その国有企業を中心に国家資本主義を貫くということである。