限界集落と呼ばれる、地方の山間部・山村・離島など、交通インフラ・産業基盤・商業施設・教育などさまざまな面で不利な条件に置かれる地域について、高齢化・人口減少が急速に進み、コミュニティー崩壊の危機に立たされている事実はよく知られている。

実はこうした機器は、地方の過疎地域だけの問題ではない。最近では、東京近郊のベッドタウンや地方都市でも、都市の大きさが変わらないにもかかわらず人口が減少し、都市内に 使われない空間が小さい穴があくように生じ、密度が下がっていく「スポンジ化現象」が街をむしばんでいる。

ベッドタウンの急成長期

ベッドタウン,スポンジ化
(画像=PIXTA)

1960年代から70年代の高度成長期にかけ、地方から都市に団塊の世代(昭和22年より24年前後の生まれ)を中心とした若者が、東京などの大都市に流れ込んだ。彼らはやがて結婚するが、当時の都会には古くからの戸建て住宅以外は、木造2階建てアパートと長屋以外に選択肢はなかった。

そこで、若者たちは郊外に住宅を求めた。横浜市を例に見てみよう。「横浜市の人口 ~平成28年中の人口動態と平成29年1月1日現在の年齢別人口~」の調査結果から、典型的なベッドタウンである横浜市南部(戸塚区・瀬谷区・泉区・栄区)の人口は、1960年の10万人から、20年後の50万人に急増した(現在の人口は68万人)ことがわかる。

この間、1950年代の時点で既に市街地として発展していた横浜中心部(石川町・関内等)の人口は、12万人のまま変化していない。

郊外における人口急増の一方で、1960年代には郊外の住宅地建設とスプロール化、1970年代に入るとマンション建設ラッシュが起きた。

ベッドタウンの老齢期

ここ数年、高度成長期に住宅を建てた若者たちは定年を迎え、地域に戻ってきている。郊外のベッドタウンでは、昼間に定年を迎えたであろう高齢者の姿が目立つようになった。

やがて団塊の世代たちの多死時代を迎え、その時期は今後15年以内だ。横浜南部の場合、4区すべてで死亡数が出生数を上回る人口自然減の事態に陥っている。そして今後この傾向はますます強まるものと予測される。ちなみに横浜南部4区の65歳以上人口は26.9%と、横浜市平均の24.0%を2.9ポイント上回っている。

ベッドタウンの衰退期

多死社会の到来で、最も懸念されるのが空き家の急増だ。すでに兆候が現れている。戸塚区では、現在区内の空き家戸数は2000戸未満、全戸建て戸数の4%弱の水準だが、ここ5年で4割増加した。

団塊の世代が亡くなって、子供たちがその土地に引っ越してこなければ、空き家は虫食い状態で急増する。これが「スポンジ化現象」である。

特に30代・40代の勤労者世帯は、共稼ぎの比率が高い。仕事も家事も忙しい彼らは、比較的家計に余裕があることから職住近接を求め、都心回帰志向を強めている。人気があるのは、湾岸エリアや新宿区・文京区のマンションで、郊外のマンションは分譲が伸び悩む。

一方で、郊外においては開発規制が緩く住宅・マンション開発が相変わらず進んでいる。こうした動向は将来のスポンジ化を加速しかねない。

加えて生産緑地(大都市圏で農地の相続税・固定資産税の減免を認める制度)の適用が2022年に更新時期を迎える。大量の農地が住宅地として放出される可能性もあり、これも懸念材料だ。

スポンジ化は、コミュニティーとしての機能低下、水道・ガス・電気・通信・福祉といった基盤インフレの拡散・希薄化、さらには景観を損なうといった問題を引き起こすと考えられる。

問題解決の処方箋とは?

ではどうすれば解決できるのか。就学未満の幼児だけでなく小学生・中学生にまで医療費補助を拡げたり、子育て世代向けの住宅取得助成など、移住呼び込みに躍起な自治体が増えているが、人口減社会においては抜本的対策と言えない。

今後は、都市スペースをいかに縮小するかが課題となってくる。その選択肢の一つが、いわゆるコンパクトシティー計画と言われている。2014年には都市再生特別措置法が改正され、これに合わせ立地適正化計画を国土交通省が打ち出し、いくつかの自治体で取り組みが始まっている。(ZUU online編集部)