パワーカップルという言葉をご存じだろうか。 利用者によって定義は様々だが、ニッセイ基礎研究所が発表しているレポート『「パワーカップル」世帯の動向(1)-夫婦とも年収700万円超は共働き世帯の約2%でじわり増加。夫が高年収でも働く妻は増加傾向、夫婦間の経済格差拡大か』によれば、夫婦のそれぞれ年収700万円を超えるカップル・夫婦と定義している。

年収700万円超が二人と言う事で単純に世帯年収は1400万円となる。羨ましいと感じる人もいるだろうし、1人でそれ以上稼いでいる人もいるだろう。しかし、そんなパワーカップルにも人生設計上の注意点は多い。

パワーカップルの特徴

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(画像=PIXTA)

女性で年収700万円超というと、少し高いと思う方もいるかもしれない。しかし、大手企業に総合職として勤めている場合、給与が480万円(支給月額40万円)、賞与が240万円(給与の6カ月分)と考えれば、比較的多くいると考えられる。年収11000万円を超えるのは少し難易度が高くても、年収700万円という数字は、日本の優良企業にとっては当たり前のような給与水準となる。

年収700万円を超えるということは、管理職であり組織を預かる役職だけあって仕事の責任も重いものとなる。日本において管理職と言う立場は一般の社員と変わらず、労働時間は長くなる。労働時間が長くなっても残業代がつかないため、長時間労働に対するインセンティブは小さいのだが、組織を預かる以上定時に帰れるわけもない。管理職になったら収入が減ったというのはウソではなく本当の事が多い。

さて、仕事の責任が重く労働時間が長くなると、日常生活へはどんな影響がでるだろうか。答えは生活より仕事の比重が重くなり、日常に手間暇をかける事ができなくなる、である。キーワードは省エネ、時短、外注である。

省エネと言うのは、疲れるから自分でやらないことであり、例えば食事は家で作らず全て外食すること。朝はカフェ、昼はオフィス近隣でランチ、夜は自宅の最寄り駅で外食となる。子どもが小さくなければ可能な選択である。ネットショッピングも物理的に買い物に行くという行為を無くしているため省エネといえそうだ。

時短はレトルト食品を買ってレンジでチン。自動食洗機での皿洗い。お掃除ロボットでの掃除の自動化(但し、お掃除ロボット自体の清掃は自ら行う)など、手間を大幅に減らしてくれる製品やサービスを購入することができる。自分の時間をできる限り確保し、休養にあてるような選択である。駅近のマンションに住むというのも通勤時間の時短と言える。職住近接も時短技術である。

外注は文字通り自分ではやらない。料理を作ってもらう、掃除をしてもらうなど家事全般の外注。教育系の保育や塾は教育の外注であり、そもそも学校は国の施す教育の外注と言える。

これらの商品やサービスはお金がかかる。長時間働いた分の収入を省エネ、時短、外注に充当することで、パワーカップルは生活負荷が減り仕事に集中できる。

収入の一部または大部分は省エネ等サービスに費やされるが、経済全体では新しい製品やサービスが生まれ、雇用がうまれる。ただ貯め込むだけではないため、経済効果が大きくなる。このような製品・サービス購入に伴い、仕事の生産性が上がれば会社、本人、省エネ等サービス提供者三方よしである。

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パワーカップル3つの注意点 お金の専門家の視点から

たくさん稼いでたくさん使う。昭和な時代のお金の使い方と言うことなかれ。女性が社会で活躍をする機会が増えた事で、収入も増え消費も増える。いいことづくめであるが気をつけなければいけない点もある。

ライフプランや人生設計の専門家として気をつけて頂きたい点は3つある。

1つ目はパワーカップルの妻が何歳まで働きたいと考えているのか。また何歳まで今の収入が維持できるのか、ということである。女性自身も定年までハードに働きたいと思っている方がどれだけいるのか疑問であり、筆者が相談を受ける方々も、ハイスペックで高所得の女性は50歳位で仕事に見切りをつけて引退したい、扶養に入って好きな事をしたい。という希望を持っている方が多い。

となると、10年〜15年早く引退するためには、それなりの事前準備が必要であるが、その前提となる預貯金がどれほど貯まっているかというと、夫婦で財布が分かれていて把握できない、そもそも使い過ぎて貯まっていないというケースも散見される。

2つ目は生活コストが高いため、仕事が終わった後に高消費を抑える事が難しくなるという点。買い物でも旅行でもワンランク上の買い物をしてきたが故、その習慣を突然止めることができない。むしろ、定年後こそ自分の為にさらに上級の品物を求める方も多い。となると、収入がなくなったあとの生活設計は心もとないと言わざるを得ず、一言でいえば破たん予備軍であることも考えられる。

3つ目は住宅設計である。立地が良くハイクオリティなマンションライフを送って、場合によっては家賃補助で低コストで賃貸住宅に住み続ける事ができるパワーカップルも多い。その場合、家賃補助の切れるタイミング、または定年のタイミングで家をどうするかは大きな金額だけに事前の準備が必要となる。

パワーカップルの多くは、住みなれた町での継続居住を望む場合もあり、港区に定年後も居住するとなると賃料だけで毎月20万円の支出となる。住宅ローンの組める年齢でもないため、100年ある人生の残り40年。家賃をどう払い続けるか、改めて考える必要がある。

このように、パワーカップルにも人生設計上の注意点は多い。できれば、少し休憩をはさんで、自分の人生をもう一度振り返る必要がありそうだ。

高橋成壽 寿FPコンサルティング
慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融関係のキャリアを経て2007年にファイナンシャル・プランナー事務所を設立。現在は寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター、寿アセットマネジメントなど、複数の金融サービス会社の代表を務める。メディアへの出演多数。著書に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)がある。FPサービスとして「ライフプランの窓口」、「相続センター神奈川」を企画運営している。

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